
本記事では、「60代から積立NISAを始めるのはもう遅いのか?」という不安を抱える方に、今からでも活用できる価値と具体的な運用戦略を解説していきます。

「60歳からでも本当に意味があるのか」「何年続ければ効果が出るのか」「リスクを抑えて運用するにはどうすればいいのか」など、制度の仕組みだけではわかりにくいポイントを、シミュレーションや銘柄選びの視点も交えてわかりやすくお伝えします。
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60代の積立NISAは遅いと感じても使い方次第で活用可能
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60歳からの積立NISAは運用期間と目的を明確にすることが重要
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短期でも非課税メリットを得られる設計ができる
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iDeCoとの違いを理解して自分に合う制度を選ぶ
60代から積立NISAを始めるのはもう遅い?
今から積立NISAを始めるのは本当に遅いのか?
「今さら始めても遅いのでは?」という疑問は、60代で積立NISAを検討する多くの方が感じている不安です。
ですが、「資産を少しでも効率よく育てたい」「老後の備えを自分で作りたい」という意思がある限り、始めるのに“遅すぎる”ということはありません。
積立NISAは非課税期間が20年と設定されていますが、これは“20年使わないと損”という意味ではありません。
数年でも非課税で運用できるメリットは大きく、むしろ「短期であっても税制メリットがある」制度と捉えるべきです。
たとえば、5年で売却する場合でも、通常なら約20%かかる税金がゼロになるため、運用益のすべてを手元に残せる点は大きな利点です。
「遅いかどうか」ではなく、「今の自分に合った使い方ができるかどうか」が、判断の軸になります。
遅いと言われがちな年代でも活用できる3つの理由
「もう遅い」と言われがちな60代ですが、それでも積立NISAを活用する価値がある理由は以下の3点に集約されます。
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非課税の恩恵は短期間でも受けられる
→ 3〜5年の運用でも、課税口座より有利に資産を増やせます。 -
少額から始められるためリスク管理しやすい
→ 月1万円から始めることで、生活への影響も最小限です。 -
インフレ対策としての機能
→ 銀行預金では増えない時代に、物価上昇リスクから資産を守る手段になります。
特に年金だけでは将来不安という方にとっては、「小さくても資産を成長させられる選択肢がある」という事実自体が安心材料になるはずです。
実際に始めている人の割合と行動パターン
「60代で積立NISAをやっている人って本当にいるの?」と疑問に感じる方も多いですが、実際には高齢層でも積極的に活用する人が増えています。
金融庁の公表データ(2024年末時点)によれば、つみたてNISA利用者の約9.8%が60歳以上です。
全体に対する割合は小さいものの、年々その比率は増加傾向にあります。
また、その層の特徴としては、
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生活費に直結しない余剰資金で積立している
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退職金の一部を月割りで運用している
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投資信託はバランス型や債券型を選ぶ傾向が強い
つまり、「ギャンブル的な投資ではなく、堅実な運用手段」として選ばれていることが分かります。
60代から始めることは決して珍しいことではなく、むしろ“合理的な準備”として広まりつつあります。
注意すべきデメリットと始める前の確認ポイント
もちろん、60代から積立NISAを始めるうえでの注意点もあります。
最も重要なのは、「時間の制約がある」という事実を正しく認識することです。
具体的なデメリットと確認ポイントは以下の通りです。
項目 | 内容 | 対策のヒント |
---|---|---|
運用期間が短い | 複利効果を十分に得にくい | 年単位での成果を想定し過度な期待を避ける |
リスク耐性が下がる | 元本割れの不安が大きくなる | 債券型・バランス型など安定資産を選ぶ |
出口戦略が曖昧になりやすい | いつ解約するかを決めず始めると失敗しやすい | あらかじめ“使う年齢”を逆算しておく |
短期間でも無理のない設計にすることで、これらのデメリットはコントロール可能です。
重要なのは、「何年使えるか」ではなく、「どう使えば納得感があるか」という視点です。
「やめたほうがいい」と言われる理由と誤解
ネット上では「60代で積立NISAなんてやめたほうがいい」という声も見られます。
ですが、これには誤解や極端な意見が含まれていることも少なくありません。
よくある主張と実際のところを比較すると、
よくある主張 | 実際のところ |
---|---|
20年使えないから損 | 数年でも非課税運用できれば十分メリットあり |
年齢的にリスクが高い | 商品選び次第でリスクは低く抑えられる |
相続や介護のことを考えると複雑 | 積立NISAは原則自由に解約でき、柔軟性がある |
つまり、「若い人向け」というイメージが独り歩きしているだけで、制度自体は全年齢に開かれています。
むしろ60代は、「資産をどう守るか」「少しでも増やすにはどうすべきか」を真剣に考える世代です。
そういった意味で、積立NISAはむしろ向いている制度とも言えます。
向いている人・向かない人の違いをチェック
積立NISAは制度として「誰でも使える」仕組みですが、実際に向いている人と向かない人は存在します。
判断の基準になるのは「運用目的の明確さ」と「リスク許容度」の2点です。
向いている人の特徴
向いていない人の特徴
積立NISAは時間とリスクをうまくコントロールしたい人”にフィットする制度です。
リターンの期待値が高すぎたり、短期での成果を求めすぎると、制度の本質とズレが生じてしまいます。
iDeCoとどちらが自分に合うのかを見極める
60代は「積立NISA」も「iDeCo」も利用できる年代であり、どちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。
結論としては、「資金をいつ使いたいか」が最大の判断軸になります。
比較項目 | 積立NISA | iDeCo |
---|---|---|
資金の引き出し | いつでもOK(非課税運用中でも) | 原則60歳以降(受取開始年は制限あり) |
税制メリット | 運用益が非課税 | 掛金の全額所得控除+運用益非課税 |
柔軟性 | 高い | 低い(老後資金専用) |
向いている人 | 数年後に使う可能性がある人 | 年金の上乗せ目的で長期拘束できる人 |
iDeCoは「老後以降の資金づくり」に明確に向いていますが、積立NISAは短期・中期・長期いずれでも柔軟に対応できるため、60代で初めて投資をする人にとっては、扱いやすさの面で優位性があります。
短期でも効果を期待できる積立の設計とは?
「5年しか運用できないから、どうせ意味がない」という声も聞かれますが、設計次第では5年でも成果を出すことは十分可能です。
大切なのは、「期間に応じてリスクと期待リターンを最適化する設計」です。
たとえば以下のようなイメージです。
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月1万円 × 年利3% × 5年 → 元本60万円 → 約66.5万円(運用益:6.5万円)
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税制メリット:約6,500円(20%の税金が非課税になる分)
このように、数年でも非課税効果によってリターンが“純粋に増える”構造を作れます。
さらに、投資信託の中には元本のブレが小さい安定型商品もあるため、価格変動を抑えたうえで運用を行うことも可能です。
積立NISAは何歳までに始めるのが現実的か?
「65歳までにスタートできれば制度の価値は十分享受できる」といえます。
積立NISAの制度自体は年齢制限がありませんが、投資の特性上「最低でも3年以上運用できるかどうか」がひとつの分岐点になります。
判断基準の目安
年齢 | 運用期間 | 向いている判断 |
---|---|---|
60〜62歳 | 5〜8年 | 十分に運用効果あり |
63〜65歳 | 3〜5年 | 商品次第で活用可能 |
66歳以降 | 1〜2年 | 慎重な判断が必要、目的を明確に |
運用期間が短くなるほど、安定資産を選ぶこと・出口を意識して始めることが重要になります。
目的が「運用益を得る」だけでなく、「資金の一時退避」や「家族への資産移転」であれば、さらに活用の幅は広がります。
投資期間が限られる中で考える出口戦略の基本
60代で積立NISAを始めると、「いつ売るか」「どう使うか」という出口戦略がスタートと同時に重要になります。
長期運用が前提の若年層と違い、出口を見据えた逆算型の設計が求められます。
出口戦略のポイント
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売却時期をあらかじめ“目安年齢”で決めておく
例:「70歳の誕生月に一部売却」など -
価格が上がったタイミングで部分売却も可
→ 一括で売る必要はなく、“年ごとに取り崩す”ことも可能 -
家族に伝えておくことも重要
→ 自分の健康状態によって柔軟に対応できるように
積立NISAの魅力は「いつでも非課税で売却できる」という柔軟性にあります。
だからこそ、“売る判断”を先送りせずに、最初から設計に組み込んでおくことが成功の鍵になります。
60歳からでも活用できる積立NISAの始め方とおすすめの実践戦略
月1万円の積立でどれくらい増えるかを試算
「月1万円だけでも意味があるの?」と疑問を持たれる方も多いと思いますが、積立NISAの効果は金額よりも“続ける年数と運用効率”にあります。
たとえば、以下のシミュレーションを見てみましょう(年利3%想定・税引きなしの単利近似)。
積立期間 | 総積立額 | 運用益 | 最終金額(概算) |
---|---|---|---|
3年 | 36万円 | 約1.7万円 | 約37.7万円 |
5年 | 60万円 | 約6.5万円 | 約66.5万円 |
7年 | 84万円 | 約12.9万円 | 約96.9万円 |
たとえ5年という短期であっても、運用益をそのまま受け取れる(非課税)のは非常に大きなメリットです。
「元本割れしにくい商品を選び、コツコツ積立を続ける」だけで、老後資金に上乗せできる可能性が生まれます。
年代に合った投資信託の選び方と考え方
60歳からの投資では、値動きの激しい商品よりも“安定して値が育つ商品”を選ぶことが重要です。
そのため、以下のような方針で選ぶのが基本となります。
安定志向の人向けの選び方
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国内債券型:価格変動が小さく、保守的な運用向き
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バランス型(株+債券):株式の成長性と債券の安定性を組み合わせた中庸スタイル
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全世界インデックス型:1本で分散投資が完了するため、長期で保有しやすい
また、信託報酬が低い(年率0.2〜0.3%程度)ものを選ぶことで、運用益を削られにくくなります。
迷ったときは、eMAXIS SlimシリーズやSBI・Vシリーズなど、ネット証券で取り扱いが多く、低コストで評価が高い商品から検討するのもおすすめです。
新NISAか従来の積立型か、選び方の基準とは?
2024年から始まった「新NISA」により、つみたて枠・成長投資枠が統合されたことで、60代での選び方にも違いが生まれています。
“年齢と目的に応じてどの枠を使うか決める”ことがポイントです。
項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
---|---|---|
商品の特性 | インデックス中心、低リスク | 株式比率高め、値動きが大きいものもあり |
非課税限度額 | 年120万円まで | 年240万円まで(つみたて枠と合算) |
向いている人 | 積立前提で安定を求める人 | 一括投資や分配金目的の人 |
60代で初めて投資を始める場合は、従来のつみたて投資枠を軸に運用し、慣れてきたら成長枠も検討するという2段階アプローチがおすすめです。
無理に両方を使おうとせず、まずは「継続できるかどうか」を重視しましょう。
リスクを抑えつつ資産を育てる配分の工夫
60歳以降の運用では、「増やす」よりも「減らさない」意識が強くなります。
そのため、投資信託の選び方だけでなく、資産配分(ポートフォリオ)の設計が非常に重要になります。
例:60歳から始める方向けのバランス例(リスク控えめ)
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国内債券:40%
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海外債券:30%
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海外株式(インデックス):20%
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現金・預貯金:10%
このように株式の割合を控えめにし、債券や現金をしっかり確保することで、暴落時の不安を軽減しながら着実に資産を運用できます。
また、「バランス型ファンド(例:8資産均等型)」を使えば、1本で上記配分を実現することも可能です。
高齢層に向かない投資信託の特徴とは?
一方で、60代以降の方が選ばない方が良い商品もあります。
共通するのは、値動きが激しく、運用リスクが高いものです。
高齢者が避けるべき商品の例
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レバレッジ型・ブルベア型(値動き2倍など)
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毎月分配型のアクティブファンド(元本取り崩し型)
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新興国株式インデックスファンド(値動きが大きい)
これらの商品は、短期間で大きな利益を狙う投資家向けであり、60代からの安定運用には不向きです。
「非課税だから少し冒険してもいいかな」という考えはリスクを招くため、“自分にとって理解しやすく続けやすい商品”を選ぶことが大切です。
65歳以降に始める場合の現実的な選択肢
65歳を過ぎてから積立NISAを始める場合、「もう数年しか運用できないのでは?」という懸念が出てきます。
ですが、目的が明確なら、短期でも選択肢は十分あります。
65歳以降でも有効な戦略としては以下のようなケースが挙げられます。
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年金の受給が始まって生活費に余裕がある層が、退職金の一部で月1〜2万円を積立
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「子どもや孫への資産移転」を見据えて、贈与税対策の一環として積立NISAを活用
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医療・介護費用に備えて、数年以内に使う資金の“税優遇付き運用”として設定
もちろん、リスクを抑えた商品選びと「5年以内の取り崩し前提」という前提は必要ですが、“短期前提でも使える制度”であることは間違いありません。
無理なく続けるための仕組みと考え方
積立NISAで失敗する多くのケースは、「続けられなかった」ことに起因しています。
60代以降では特に、無理せず続ける設計=成功に直結します。
続けやすくするための工夫
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金額は最小限からでOK(例:月5,000円)
→ やめたくなるリスクを軽減 -
自動積立を設定して“手間ゼロ”運用にする
→ 心理的な負担も少なく習慣化しやすい -
運用レポートは月に一度だけチェック
→ 過度な価格変動に一喜一憂しない習慣を作る
「損をしたらどうしよう」と思うよりも、「まず続けてみること」のほうが長期的にリターンを得る近道になります。
年金・退職金とどう組み合わせるかの視点
年金や退職金という大きなお金がある世代にとって、積立NISAは「必要ない」と感じるかもしれません。
ですが、その一部を“動かすお金”として活用することで、資金の効率が格段に上がります。
たとえば、退職金のうち100万円を元手に、以下のような形で組み合わせることが可能です。
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つみたて投資枠(月1万円)で年間12万円を積立
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残りは現金預金や定期に置いて流動性を確保
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成長投資枠で一括投資を検討する場合は商品選定に慎重を期す
すべてを運用に回す必要はなく、“使わないであろう一部”を積立NISAで育てるという発想が、資金効率を大きく改善します。
家族と共有したい制度の使い方と相続対策
高齢になればなるほど、積立NISAの「その後」も意識すべき時期に入っていきます。
その中で重要になるのが「家族との情報共有」と「相続への備え」です。
積立NISAの残高は、本人が亡くなった時点で課税口座へ移されるため、非課税メリットは終了します。
ただし、あらかじめ以下のような対策をしておくと安心です。
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証券会社・口座情報を家族と共有しておく
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定期的に「残高レポート」をプリントし保管
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相続対策として、生前贈与の一環でNISA口座活用を検討する
積立NISAは“使い切る”ことを前提にせず、“誰にどう引き継ぐか”という意識を持つことも、重要な活用法のひとつです。
よくある質問Q&A10選
Q1. 60代から積立NISAを始めるのは遅すぎますか?
A1. 数年の運用でも非課税メリットは得られるため、「もう遅い」とは言い切れません。
Q2. 積立NISAは何歳までに始めるべきでしょうか?
A2. 明確な上限はありませんが、最低でも3年以上継続できるかを目安に考えると良いでしょう。
Q3. 60代で積立NISAを利用している人は多いのですか?
A3. 金融庁のデータでも高齢層の利用は年々増えており、特に余裕資金での運用に向いています。
Q4. 積立NISAの非課税メリットはどのくらいですか?
A4. 例として月1万円を5年間、年利3%で運用すれば、約6.5万円の運用益が非課税になります。
Q5. iDeCoと積立NISA、60歳から始めるならどちらがいいですか?
A5. 資金の使い道や自由度によって異なりますが、引き出しやすさを重視するなら積立NISAが無難です。
Q6. リスクを抑えたい場合、どんな投資信託が向いていますか?
A6. 債券中心のファンドや、国内外に広く分散されたバランス型ファンドが安心感があります。
Q7. 積立NISAをやめたほうがいいと言われるのはなぜですか?
A7. 運用期間が短すぎる場合や、価格変動に耐えられないメンタルで始めると失敗のリスクが高くなります。
Q8. 退職金や年金と併用して積立NISAを使うことはできますか?
A8. はい。一部を積立NISAにまわすことで、余裕資金を効率よく運用することが可能です。
Q9. 家族に資産を残す目的でも使えますか?
A9. 名義のままの相続はできませんが、積立NISAの資産は課税口座として相続される形で引き継がれます。
Q10. 投資信託はどうやって選べばいいのでしょうか?
A10. 年齢や運用目的に応じて、価格変動の小さい商品や信託報酬の低いものを選ぶのが基本です。
60代からの積立NISAはもう遅い?60歳から始める資産運用の考え方のまとめ
最後にこの記事のポイントをまとめました。
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