
本記事は、財形貯蓄の仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説し、「意味ない」「メリットない」と言われる理由についても詳しく説明します。
会社員や公務員を対象にした財形貯蓄は、給与天引きで確実に貯蓄できる制度ですが、低金利の影響や引き出し制限があることから、「本当に意味があるの?」と疑問を持つ人も少ないでしょう。
また、iDeCoやつみたてNISAといった他の資産形成方法と比較すると、財形貯蓄の利点が見劣りする部分もあります。
この記事では、財形貯蓄の基本から、具体的なメリット・デメリット、どのような人に向いているのかを詳しく解説し、あなたにとって最適な貯蓄・資産運用の方法を考えるヒントを提供します。
- 財形貯蓄の仕組みと種類がわかりやすく理解できる
- 「メリットない」「意味ない」と言われる理由がわかる
- 税制優遇や引き出し制限のポイントを知れる
- NISAやiDeCoとの違いを比較できる
財形貯蓄とは?わかりやすく解説!
財形貯蓄の基本的な仕組みとは?
財形貯蓄とは、会社員や公務員が給与から天引きで積み立てを行う制度で、企業が従業員の資産形成を支援する目的で設けられています。
この制度を活用することで、給与から自動的に一定額を積み立てることができ、計画的な貯蓄が可能になります。
財形貯蓄は、勤務先の企業が制度を導入していることが条件となるため、すべての会社員が利用できるわけではありません。
企業と提携した金融機関に貯蓄する形をとり、原則として給与天引きで行われるため、「つい使ってしまう」という人でも確実に資産を積み上げられるのが大きな特徴です。
また、一定の条件を満たせば 非課税措置が適用 される仕組みもあります。
この非課税制度は、住宅購入や老後資金の準備を目的とした貯蓄に適用され、上限額内であれば利息が非課税になるという優遇が受けられます。
一方で、貯蓄を引き出す際には制約があるため、「すぐに使いたい」と思っても簡単には引き出せない点は注意が必要です。
財形貯蓄の種類とそれぞれの違い
財形貯蓄には、大きく分けて一般財形貯蓄・財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄の3種類があり、それぞれに異なる目的と条件が設けられています。
一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は、特定の目的を持たずに自由に貯蓄ができるタイプの財形貯蓄です。6か月以上積み立てれば自由に引き出すことができるため、「とりあえず貯金をしておきたい」という人に向いています。
ただし、税制優遇措置は一切ないため、普通預金や定期預金と同じように、利息には税金がかかります。そのため、単に貯金目的で利用するなら、他の金融商品と比較して検討する必要があります。
財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄は、住宅購入やリフォームの資金を目的とした貯蓄制度です。この制度を利用すると、元本550万円までの利息が非課税 となるメリットがあります。
しかし、住宅購入やリフォーム以外の用途で引き出すことはできず、違反すると過去に受けた非課税措置の分が課税対象となるため注意が必要です。住宅取得を予定している人にとっては、利息が非課税になるメリットを活かせる制度ですが、目的外で使う予定がある場合は向いていません。
財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は、老後資金の準備を目的とした貯蓄です。財形住宅貯蓄と同じく、元本550万円までの利息が非課税 となる優遇措置がありますが、原則として60歳以降でなければ引き出せません。
この仕組みにより、強制的に老後資金を確保できるメリットがありますが、途中でお金が必要になった場合には自由に使うことができないというデメリットもあります。そのため、老後資金をしっかり準備したい人向けの制度といえます。
参考:厚生労働省「財政貯蓄制度」
財形貯蓄はいくらまで非課税なのか?
財形貯蓄のうち、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄には、一定額までの元本に対して利息が非課税となる制度があります。
具体的には、合計で元本550万円までの利息が非課税となります。
たとえば、住宅財形で300万円、年金財形で250万円積み立てた場合、それぞれの利息は非課税の対象となります。
ただし、一般財形貯蓄にはこの非課税措置は適用されません。
そのため、単に貯蓄する目的なら、他の金融商品と比較して運用する方が有利な場合もあります。
財形貯蓄のメリットと向いている人
財形貯蓄には以下のようなメリットがあります。
【メリット】
-
給与天引きで強制的に貯蓄ができる
→ 事前に設定した金額が給与から自動的に天引きされるため、「貯金が苦手な人」に適している。 -
住宅・年金財形なら税制優遇がある
→ 元本550万円までの利息が非課税となるため、長期的な資産形成を考えている人には有利。 -
住宅ローンの低金利融資を受けられる
→ 財形住宅貯蓄を利用していると、財形住宅融資を低金利で受けることが可能。(例:0.62% など) -
確実に老後資金を準備できる
→ 財形年金貯蓄なら60歳以降まで引き出せないため、老後資金を確保する仕組みとして活用できる。
【向いている人】
-
貯金が苦手な人(強制的に貯蓄できる)
-
住宅購入を検討している人(財形住宅融資が利用できる)
-
老後資金を計画的に準備したい人(60歳まで引き出せない仕組みを活用)
財形貯蓄のデメリットと注意点
一方で、財形貯蓄には以下のようなデメリットもあります。
【デメリット】
-
低金利のため増やす目的には向かない
→ 普通預金や定期預金と同じように低金利であり、資産を大きく増やすことは難しい。 -
自由に引き出せない
→ 住宅・年金財形は特定の目的以外で引き出すと、非課税の優遇を受けられず課税対象となる。 -
退職時に制約がある
→ 転職や退職時に継続が難しくなるケースがあり、一括引き出しが必要な場合がある。 -
NISAやiDeCoと比較するとリターンが低い
→ 投資による資産運用と比べて増やす力が弱いため、運用目的なら他の制度の方が適している。
財形貯蓄の利用条件と対象者
財形貯蓄は、すべての人が利用できるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。
基本的に会社員や公務員を対象とした制度であり、企業が財形貯蓄制度を導入していることが前提となります。
利用できる人
-
企業が財形貯蓄制度を導入している会社員
財形貯蓄は、勤務先の企業が制度を導入している場合にのみ利用できます。企業ごとに対応している金融機関が異なるため、事前に確認が必要です。 -
公務員
国家公務員や地方公務員も財形貯蓄を利用することが可能です。公務員向けには独自の財形貯蓄制度が用意されている場合があります。 -
勤続1年以上の従業員(企業による)
一部の企業では、入社後すぐに利用できるわけではなく、「勤続1年以上」といった条件がある場合があります。
利用できない人
-
個人事業主・フリーランス
財形貯蓄は企業を通じた貯蓄制度のため、個人事業主やフリーランスは利用できません。この点が、NISAやiDeCoなどの個人向け制度と大きく異なります。 -
財形貯蓄制度を導入していない企業の従業員
企業が財形貯蓄制度を提供していない場合、従業員は利用できません。そのため、制度を利用したい場合は、就職時や転職時に企業の福利厚生を確認する必要があります。
財形貯蓄の引き出し方法と制限
財形貯蓄は、貯蓄したお金を自由に引き出せるわけではなく、種類によって引き出しの条件が異なります。
特に、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は、用途が厳しく制限されており、ルールに違反すると税金が発生する可能性があります。
財形貯蓄の引き出しルール
種類 | 引き出し条件 | 違反した場合 |
---|---|---|
一般財形貯蓄 | 6か月以上の積立後、自由に引き出し可能 | なし |
財形住宅貯蓄 | 住宅購入やリフォーム目的のみ | 利息に課税される |
財形年金貯蓄 | 60歳以降に年金として受け取り可能 | 利息に課税される |
注意点
-
住宅財形・年金財形は原則として目的外の引き出しができない
財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は、目的が明確に定められているため、用途外の引き出しは税制優遇が取り消され、過去の利息分が課税対象となります。 -
退職や転職時には引き出しが必要な場合がある
財形貯蓄は勤務先の企業を通じた制度であるため、退職や転職をした場合には解約が必要となる場合があります。ただし、同じ制度を導入している企業に転職した場合は、継続できるケースもあります。 -
引き出しの際には事前申請が必要
金融機関によっては、財形貯蓄の引き出しには事前に申請が必要です。特に、住宅購入や年金受給のための引き出しには、契約書や購入証明書の提出が求められることがあるため、事前に準備が必要です。
財形貯蓄は確定申告が必要なのか?
財形貯蓄の税制優遇措置は、確定申告なしで自動的に適用される仕組みになっています。
そのため、通常の利用においては確定申告は不要ですが、特定の条件下では必要になる場合があります。
確定申告が不要な場合
- 財形貯蓄を通常のルール通りに利用する場合
→ 住宅購入目的や60歳以降の年金受け取りの条件を満たしていれば、確定申告の必要はありません。
確定申告が必要になる場合
-
財形貯蓄を目的外で引き出した場合
→ 税制優遇が取り消され、過去の利息に課税されるため、確定申告で所得として申告する必要があります。 -
財形貯蓄の運用益が550万円の非課税枠を超えた場合
→ 非課税枠を超えた部分の利息は課税対象となるため、確定申告の対象になります。
財形貯蓄とろうきんの違いは?
財形貯蓄と、全国労働金庫(ろうきん)の貯蓄制度は、どちらも給与天引きによる積立を行う仕組みですが、目的や仕組みが異なります。
財形貯蓄の特徴
-
企業が導入している場合にのみ利用可能
-
住宅・年金財形では税制優遇がある
-
目的外で引き出すと課税される
ろうきんの貯蓄制度の特徴
-
労働組合やろうきん会員なら利用可能
-
自由な貯蓄が可能で、用途の制限がない
-
給与天引きによる積立も可能
ろうきんの貯蓄制度は、財形貯蓄と異なり、住宅や年金などの目的制限がないため、より自由度の高い貯蓄が可能です。
ただし、税制優遇措置はないため、利息に税金がかかる点はデメリットとなります。
財形貯蓄は複利なのか元本保証はあるのか?
財形貯蓄の金利計算方式
財形貯蓄は、金融機関ごとに金利の設定が異なりますが、単利または複利のどちらかの方式で運用されるのが一般的です。
-
一般財形貯蓄:複利が適用されることが多い
→ 定期預金型の財形貯蓄の場合、複利運用が採用されていることがあり、長期間積み立てることで利息が増える可能性がある。 -
財形住宅・財形年金貯蓄:単利で運用されることが多い
→ 住宅や年金目的の財形貯蓄は、単利計算が多く、複利運用に比べると利息の増加は少ない。
財形貯蓄の元本保証
財形貯蓄は、預金商品として提供されているため、基本的に元本保証があります。
ただし、金融機関の破綻時には、預金保険制度(ペイオフ)によって元本1,000万円までとその利息が保護される仕組みになっています。
財形貯蓄がメリットも意味もないと言われる理由とは?
財形貯蓄はやめたほうがいいと言われる理由
財形貯蓄は、給与天引きによる強制的な貯蓄ができる点や、住宅や年金目的なら非課税の優遇があるというメリットがある一方で、「やめたほうがいい」と言われることがあります。
その理由として、自由に引き出せない制約があること、金利が低いため資産を増やす手段としては不向きなこと、代替となる制度が増えていることなどが挙げられます。
特に、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は、特定の用途以外での引き出しができないという点がデメリットとして指摘されることが多いです。
たとえば、住宅資金として貯めていたものの途中で別の用途で使いたくなった場合や、財形年金貯蓄を始めたものの急な出費で引き出したくなった場合でも、用途外での引き出しは過去の利息分に課税されてしまうため、自由度の低さが問題視されます。
また、近年では iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などの優れた貯蓄・投資制度が登場しており、それらと比較すると財形貯蓄の利便性やリターンが見劣りするという声もあります。
低金利時代に財形貯蓄は有利なのか?
かつては、預金の金利が高かったため、財形貯蓄を利用することで効率的に貯蓄を増やすことができました。
ですが、現在は超低金利時代であり、財形貯蓄の金利も極めて低い状態が続いています。
一般的な定期預金の金利が 0.002%~0.02%程度なのに対し、財形貯蓄の金利もそれに近い水準であることが多く、事実上の「ほぼ増えない貯蓄」になっています。
そのため、「貯めるだけでお金を増やすことができる」といったかつての魅力は薄れています。
一方で、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄では、利息の非課税措置があるため、金利が低くても税制面でのメリットが期待できます。
ですが、それでもNISAやiDeCoのような資産運用制度と比較すると、増やす力は圧倒的に低いため、特に資産運用を意識している人にとっては不利な選択肢となるでしょう。
財形貯蓄の引き出し制限がデメリットになる理由
財形貯蓄の最大のデメリットの一つが、自由に引き出せないという点です。
特に、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は、目的外の引き出しが制限されており、違反すると過去の利息分に課税されるというルールがあります。
たとえば、以下のようなケースでは不便さを感じることが多いでしょう。
-
住宅購入の予定がなくなった場合
→ 財形住宅貯蓄に積み立てたものの、住宅を購入しないことになった場合、通常の預金のように自由に引き出すことができず、過去の利息に税金がかかるため、メリットが消えてしまう。 -
急な出費が発生した場合
→ 財形年金貯蓄に積み立てていたお金を、例えば子供の教育資金や医療費に充てたいと考えても、60歳未満での引き出しは税制優遇が適用されないため、結局は通常の預金と変わらないことになる。 -
転職・退職時の制約
→ 勤務先が変わることで、新しい会社が財形貯蓄制度を導入していない場合、継続ができず一括引き出しが必要になることがある。この際、予定外の出費となる可能性がある。
退職後の財形貯蓄はどうなるのか?
退職した場合、財形貯蓄はどうなるのでしょうか?
基本的に、財形貯蓄は勤務先を通じた制度であるため、退職後は継続が難しくなることが多いです。
-
転職先が同じ制度を導入していれば継続可能
→ もし転職先が同じ金融機関での財形貯蓄制度を導入している場合は、継続できる可能性があります。 -
転職先に制度がない場合は解約が必要
→ 転職先が財形貯蓄制度を導入していない場合、財形貯蓄を解約し、積み立てたお金を一括で引き出すことになる。この際、財形住宅や財形年金貯蓄の非課税メリットを享受できなくなる可能性がある。 -
退職金を使って別の資産運用に移行する選択肢もある
→ 退職後に財形貯蓄を解約した場合は、その資金をNISAやiDeCoなどの資産運用に回すのも一つの選択肢。財形貯蓄よりも利回りの良い運用が期待できる。
財形貯蓄と他の貯蓄制度の違い
財形貯蓄は、長期的な貯蓄手段として一定のメリットがありますが、近年ではiDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISA、企業型確定拠出年金(DC)など、より魅力的な制度が登場しています。
制度 | 特徴 | 利回りの期待度 | 税制優遇 |
---|---|---|---|
財形貯蓄 | 給与天引きで積み立てる | 低い | 住宅・年金財形は利息非課税 |
iDeCo | 老後資金専用の積立投資 | 高い | 掛金が所得控除、運用益非課税 |
つみたてNISA | 長期資産運用向けの非課税制度 | 高い | 運用益が20年間非課税 |
定期預金 | 元本保証あり、低金利 | 低い | なし |
この比較からもわかるように、「資産を増やしたい」と考えるなら、財形貯蓄よりも iDeCoやつみたてNISAを活用する方が有利であることがわかります。
財形貯蓄の払い戻し時に税金はかかるのか?
財形貯蓄を払い戻す際に税金がかかるかどうかは、貯蓄の種類や払い戻しの目的によって異なります。
特に、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は非課税制度が適用されるため、適切な条件下で払い戻せば税金がかからないのが大きな特徴です。
ですが、条件を満たさない場合には、利息部分に課税されるため注意が必要です。
ケース1:非課税で払い戻せる場合
以下の条件を満たしている場合、利息に対して税金はかかりません。
- 財形住宅貯蓄の場合:住宅の購入やリフォームに使用する目的で払い戻す
- 財形年金貯蓄の場合:60歳以降に年金として払い戻す
これらのケースでは、元本550万円までの利息が非課税となるため、課税されることなく払い戻しができます。
ケース2:課税対象となる場合
以下のようなケースでは、過去に受けた利息の非課税措置が取り消され、利息部分に税金がかかる可能性があります。
-
財形住宅貯蓄を住宅購入以外の目的で払い戻す
-
財形年金貯蓄を60歳未満で払い戻す
-
非課税枠(550万円)を超えて利息が発生している
この場合、通常の預金と同じく20.315%(所得税+住民税)の税金が利息部分にかかるため、注意が必要です。
払い戻し時の税金を回避する方法
- 財形住宅貯蓄・年金貯蓄のルールを守る
→ 住宅購入やリフォームの目的でのみ財形住宅貯蓄を払い戻し、年金目的なら60歳以降に引き出す - 非課税枠内で管理する
→ 財形貯蓄の元本を550万円以内に抑えることで、利息に対する課税リスクを軽減する
財形貯蓄は老後資金として適しているのか?
財形貯蓄の中でも、財形年金貯蓄は老後資金の準備を目的とした制度です。
一定の条件を満たせば、利息の非課税メリットを受けながら積み立てができるため、老後資金の確保に適していると考えられます。
財形年金貯蓄のメリット
-
60歳まで引き出せないため、確実に老後資金を確保できる
→ 途中で使ってしまうリスクを回避し、強制的に貯められる -
利息の非課税措置がある(元本550万円まで)
→ 長期間運用すれば、その分非課税の恩恵を受けられる -
元本保証があるため、リスクが低い
→ 株式投資や投資信託と異なり、元本が保証されているため、リスクを抑えながら貯蓄可能
老後資金としてのデメリット
- 60歳まで引き出せないため、流動性が低い
→ 突発的な出費に対応できない - iDeCoと比較すると、節税メリットが少ない
→ iDeCoでは掛金が所得控除の対象になるが、財形年金貯蓄ではならない - 低金利のため、資産を大きく増やすことは難しい
→ インフレリスクを考慮すると、増やす目的には不向き
財形年金貯蓄は、確実に老後資金を貯めたい人には向いているが、資産を大きく増やしたい場合は不向き です。
運用益を求めるなら、iDeCoやつみたてNISAを活用する方が有利でしょう。
財形貯蓄は死亡時にどうなるのか?
財形貯蓄の契約者が死亡した場合、預金としての扱いとなり、相続財産の一部として処理されます。
そのため、以下のような手続きが必要になります。
財形貯蓄の相続手続き
- 死亡届の提出
→ 契約者が亡くなったことを金融機関に報告 - 相続人による解約手続き
→ 遺族が財形貯蓄の払い戻しを申請(相続人であることの証明が必要) - 相続税の計算
→ 財形貯蓄の残高が相続財産に含まれ、一定額を超えると相続税の課税対象となる
注意点
- 財形住宅・年金貯蓄は相続時に用途制限がなくなる
→ 相続時には、住宅購入や年金受給の制限がなくなり、通常の預金として払い戻し可能 - 遺族の間でトラブルになる可能性も
→ 相続財産の分配方法について事前に整理しておくことが重要
財形貯蓄は、相続時にトラブルにならないように、遺言書を作成しておく、または生前贈与を活用するなどの対策が考えられます。
財形貯蓄より資産運用のすすめ
財形貯蓄は、元本保証があるため安全性の高い貯蓄方法ではありますが、低金利時代においては資産を増やす手段としては不向きです。
特に、日本の長期的な低金利環境では、財形貯蓄の利息はほぼゼロに等しいため、「お金を貯める」という点では有効でも、「お金を増やす」目的には適していません。
一方で、資産運用を組み合わせることで、リスクを抑えながらも長期的に資産を増やすことが可能です。
近年では、政府主導の制度であるつみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇のある投資手段が充実しており、資産形成を目的とするならば、これらの活用を検討すべきでしょう。
また、FX(外国為替証拠金取引)も資産運用の選択肢のひとつとなりますが、リスクが高いため慎重な判断が必要です。
財形貯蓄よりもおすすめの資産運用方法
つみたてNISA
つみたてNISAは、運用益が20年間非課税となる制度で、長期的な資産形成に最適です。
特に、毎月少額から投資できるため、財形貯蓄と同じ感覚で自動的に積み立てながら資産運用が可能となります。
- 税制メリット:運用益が最長20年間非課税
- 投資対象:長期運用に適した投資信託(金融庁が認定した商品)
- リスク:元本保証はないが、長期運用によってリスクを分散可能
- 利回りの期待値:年平均3~5%(過去実績ベース)
財形貯蓄と異なり、つみたてNISAは非課税で資産運用が可能なため、低リスクで長期的な資産形成をしたい人におすすめです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、掛金が全額所得控除となり、税制メリットが大きい制度です。財形年金貯蓄と比較すると、以下の点で優れています。
- 掛金が全額所得控除 → 税負担が軽減される
- 運用益が非課税 → 資産を増やす効果が高い
- 受取時も控除対象 → 一時金として受け取る際に「退職所得控除」が適用される
例えば、年収500万円の人が毎月2万円をiDeCoに積み立てた場合、年間24万円の所得控除が受けられ、税負担が約6万円減る計算になります。
これにより、実質的に国が資産形成をサポートする仕組みとなっています。
ただし、60歳まで資金を引き出せないという制約があるため、長期運用を前提に活用することが重要です。
高配当株・ETF投資
高配当株やETF(上場投資信託)を活用することで、配当収入を得ながら資産を増やすことが可能です。
特に、財形貯蓄のような低金利の金融商品ではなく、3~5%程度の利回りが期待できる投資商品を活用することで、資産の増加スピードを上げることができます。
- 高配当株:配当利回りが3%以上の企業に投資し、長期的にインカムゲインを得る
- ETF:市場全体に分散投資できる商品で、低コストで資産運用が可能
例えば、米国のS&P500に連動するETFに投資した場合、過去20年間の平均リターンは約7%です。
このように、財形貯蓄よりもはるかに高いリターンを得られる可能性があるため、長期運用を考えている人には適した選択肢です。
FX(外国為替証拠金取引)
FX投資は、通貨の値動きを利用して利益を狙う投資手法で、レバレッジを活用することで資産を効率的に増やすことが可能です。
-
短期~中期の運用が可能:株式投資とは異なり、24時間取引ができるため、サラリーマンや主婦でもトレードしやすい
-
少額からスタート可能:証拠金取引のため、少額の資金でも取引が可能
-
金利差を利用したスワップポイント:高金利通貨を保有すれば、金利収入を得ることが可能
ただし、FXはリスクが高く、元本保証はないため、資産運用初心者には向かないケースもあります。
レバレッジの管理を適切に行い、長期的な視点で慎重に運用することが求められます。
財形貯蓄と資産運用の比較
項目 | 財形貯蓄 | つみたてNISA | iDeCo | 高配当株・ETF | FX |
---|---|---|---|---|---|
安全性 | ◎(元本保証) | △(リスクあり) | △(リスクあり) | △(リスクあり) | ×(ハイリスク) |
利回りの期待値 | 0.002~0.02% | 3~5% | 3~5% | 3~7% | 変動大 |
税制メリット | 住宅・年金財形は非課税枠あり | 運用益非課税 | 掛金所得控除・運用益非課税 | 配当控除あり | なし |
流動性 | △(住宅・年金財形は制限あり) | ◎(売却可能) | ×(60歳まで引き出し不可) | ◎(売却可能) | ◎(即時取引可能) |
この比較からもわかるように、財形貯蓄は元本保証のある安全な貯蓄方法ですが、資産を増やすには不向きです。
将来的な資産形成を考えるなら、NISAやiDeCo、高配当株投資などを活用する方が効率的でしょう。
参考:厚生労働省「財政貯蓄制度」
よくある質問Q&A10選
Q1. 財形貯蓄とは?わかりやすく教えてください
A: 財形貯蓄は、会社員や公務員が給与天引きで貯蓄を行う制度です。一般的な銀行預金とは異なり、強制的に貯蓄できるため「貯められない」人に向いているのが特徴です。
また、財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄は、元本550万円までの利息が非課税となるため、税制面のメリットもあります。ただし、企業が制度を導入していないと利用できないため、誰でも使えるわけではありません。
Q2. 財形貯蓄は本当に意味ないの?
A: 財形貯蓄が「意味ない」と言われるのは、金利が非常に低く、資産を増やすには不向きだからです。
現在の低金利環境では、財形貯蓄の金利は0.002%程度で、ほとんど増えません。そのため、資産運用を考える人にとっては、つみたてNISAやiDeCoのほうがはるかに魅力的な選択肢になります。
ただし、「貯金が苦手な人」や「住宅購入や老後資金のための非課税メリットを活かしたい人」にとっては、一定の価値があります。
Q3. 財形貯蓄にはメリットない?実際どうなの?
A: 財形貯蓄には「給与天引きで確実に貯蓄できる」「住宅や年金目的なら利息が非課税」というメリットがあります。しかし、自由に引き出せない制約があり、利回りも低いため、「メリットがない」と感じる人もいます。
以下のような人には、特にメリットが少ないかもしれません。
-
自由に資金を使いたい人(財形住宅・年金貯蓄は引き出し制限あり)
-
金利の高い投資をしたい人(つみたてNISAやiDeCoの方がリターンが大きい)
-
すぐに使う予定の貯蓄をしたい人(定期預金の方が向いている)
一方で、計画的に資産を貯めたい人や、住宅購入を考えている人にとっては有利な制度と言えます。
Q4. 財形貯蓄をやめるべき?どんな場合に向いていない?
A: 財形貯蓄を「やめたほうがいい」と言われる理由は、低金利で資産が増えにくいことと、自由に引き出せないことです。以下のケースに該当する人は、財形貯蓄よりも他の方法を検討すべきでしょう。
✅ すぐに使う可能性のあるお金を貯めたい → 普通預金や定期預金が向いている
✅ 資産を増やしたい → つみたてNISAやiDeCoを活用したほうがよい
✅ 退職や転職の予定がある → 財形貯蓄は勤務先が変わると継続できない可能性がある
ただし、「貯金が苦手で強制的に貯めたい人」には適しています。
Q5. 財形貯蓄の払い戻し時に税金はかかるの?
A: 財形貯蓄を払い戻す際、用途や金額によって税金がかかるかどうかが決まります。
✅ 住宅購入や年金目的で払い戻す場合 → 税金はかからない(非課税枠550万円まで適用)
✅ それ以外の目的で払い戻す場合 → 利息部分に約20%の税金がかかる
財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄を活用するなら、ルールを守って非課税枠内で運用することが重要です。
Q6. 退職後の財形貯蓄はどうなるの?
A: 退職すると、財形貯蓄は継続できない場合が多いです。
- 転職先でも財形制度がある → そのまま継続可能
- 転職先に財形制度がない → 強制的に払い戻し(非課税枠が消失する場合あり)
もし退職が決まっているなら、NISAやiDeCoなどの別の資産形成手段に切り替える準備をしておくのが賢明です。
Q7. 財形貯蓄の引き出し制限はどれくらい厳しいの?
A: 一般財形貯蓄は自由に引き出せるものの、住宅財形・年金財形は原則として目的以外の引き出しができません。
- 一般財形貯蓄 → 6か月以上積み立てれば自由に引き出し可能
- 財形住宅貯蓄 → 住宅購入・リフォーム以外の用途では引き出し不可
- 財形年金貯蓄 → 60歳未満で引き出すと税制優遇がなくなる
途中解約すると税金が発生する可能性があるため注意が必要です。
Q8. 財形貯蓄とつみたてNISA、どちらがいい?
A: 財形貯蓄とつみたてNISAのどちらが良いかは、目的によって異なります。
✅ 確実に貯めたい → 財形貯蓄(給与天引きで強制貯蓄)
✅ 資産を増やしたい → つみたてNISA(投資で運用益が非課税)
つみたてNISAは長期投資による資産形成が可能なので、財形貯蓄よりもリターンを期待できるでしょう。
Q9. 財形貯蓄は確定申告が必要?
A: 通常の財形貯蓄では、確定申告は不要です。
ただし、非課税枠(550万円)を超えた利息や、目的外で払い戻した場合は確定申告が必要になることがあります。非課税枠を超えると、通常の利息と同様に20.315%の税金がかかるため、注意が必要です。
Q10. 財形貯蓄よりも意味がある貯蓄方法は?
A: 財形貯蓄は「貯めること」には向いていますが、「増やすこと」には向いていません。そのため、資産運用を考えるなら、NISAやiDeCo、高配当株・ETF、FX投資などがより効果的な選択肢になるでしょう。
財形貯蓄とは?メリットも意味もないと言われる理由をわかりやすく解説!のまとめ
最後にこの記事のポイントをまとめました。
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