株式・投資信託を利確して買い直すなら?新NISAの賢い活用法と注意点

新NISA 投資信託・ETF

本記事は、「投資信託を利確して買い直す」戦略を検討している方や、新NISAを使って賢く資産運用を進めたいと考えている方に向けたガイドです。

非課税での株式投資や投資信託の再投資が可能になった今、タイミングや制度の仕組みを理解することで、将来のリターンに大きな差が生まれます。

利確時の税金、新NISAの投資枠、そして再投資の注意点まで、押さえておくべきポイントをわかりやすく整理しましたので投資判断のヒントに是非ご活用下さい。

この記事の4つのポイント
  • 投資信託を利確して買い直す判断基準がわかる

  • 新NISAでの再投資のメリットと注意点を理解できる

  • 株式投資と資産運用における非課税枠の使い方が学べる

  • 再投資時の税金やタイミングの考え方がつかめる

株式・投資信託を利確して買い直すなら?新NISAを活用するメリット

利確とは何か?基礎からわかりやすく解説!

投資信託や株式などの金融商品を運用していると、「利確(利益確定)」という言葉をよく目にするようになります。

これは、保有している資産の評価額が上昇して含み益が出ている状態で、それを実際に売却して利益を確定することを指します。

つまり、今ある「見込みの利益(含み益)」を「現実の利益(確定益)」に変える行為です。

たとえば、10万円で購入した投資信託が15万円まで値上がりしているとします。

この状態では、5万円の含み益が出ていることになりますが、売却しない限りこの利益は確定しません。

そして市場の値動きによっては、15万円から13万円、さらには元の10万円を下回ってしまうこともあり得ます。

このような価格変動リスクを避け、利益を手元に残すために行うのが「利確」です。

ただし、利確を行うタイミングには慎重さが求められます。

利確をすれば一時的に現金が得られますが、その後価格がさらに上昇した場合、「もっと持っていれば…」と後悔するケースもあります。

一方で、売却後に価格が下がれば「いいタイミングだった」と思えるでしょう。

このように、利確は単なる手続きではなく、投資戦略の中でも重要な判断の一つです。

さらに、利確は税金にも関わります。

特定口座や一般口座で保有している金融商品を売却して利益が出た場合、その利益には原則として20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税含む)の税金が課されます。

たとえば、50万円の利益を利確した場合は約10万1,575円が税金として引かれ、手元に残るのは約39万8,425円になります。

以下のグラフは、NISA口座と通常口座で利確した際の手取りの違いを視覚的に示したものです。

50万円の利益を利確した場合の手取り比較

利確口座 税率 税額 手取り額
通常口座(課税) 20.315% 101,575円 398,425円
新NISA口座(非課税) 0% 0円 500,000円

このように、新NISAなどの非課税制度を利用することで、利確による利益を最大限に手元に残すことができます。

利確のタイミングと制度の使い分けによって、将来の資産形成に大きな差が生まれるのです。

投資信託を利確して買い直す目的とは?

投資信託を一度売却して、再び買い直すという行動には、明確な戦略的目的が存在します。

単なる売買ではなく、将来の資産形成を見据えた「利確→再投資」の流れは、投資家にとって重要な判断のひとつです。

まず最も一般的な目的は、「非課税制度を最大限に活用するため」という点です。

たとえば、特定口座で保有している投資信託が値上がりして含み益がある場合、そのまま保有を続けると将来の売却時に課税されてしまいます。

そこで一度利確を行い、新NISA口座で買い直すことで、今後の値上がり益や分配金を非課税で受け取れるようにするというのが狙いです。

次に考えられる目的が「資産の再配分(リバランス)」です。

たとえば、特定のセクターに偏ってしまったポートフォリオを調整する際に、一度利確してから別の銘柄へ投資し直すことがあります。

このように、資産全体のリスクを分散させながら、将来の成長が期待できる分野へと資金を移動させるのも有効な目的です。

また、「現金化と将来の再投資余地の確保」もあります。

たとえば、あるライフイベント(住宅購入、教育費、介護など)で一時的に現金が必要になった場合、一度利確して現金を確保しておき、その後市場環境が整ったタイミングで新NISA口座にて再投資するというケースもあります。

このような柔軟な資産運用は、ライフステージに合わせた投資戦略の一環です。

さらに最近では、NISA制度の刷新によって非課税期間が「無期限」になったことも後押しとなり、「長期的な非課税運用を意識した移行」が加速しています。

旧NISAや課税口座で保有していた資産を売却し、新制度の枠内で買い直すことで、最大1,800万円の非課税保有限度額をフルに活用したいというニーズが高まっているのです。

以下に、利確から買い直しを行う主な目的と具体例をまとめました。

📌 利確して買い直す主な目的と具体例

目的 内容/具体例
非課税制度の活用 特定口座の投資信託を利確し、新NISAで再投資し非課税メリットを得る
資産の再配分(リバランス) 利益が出ているファンドを売却し、他の成長分野や安全資産へシフト
現金化と再投資余地の確保 一時的に資金を確保した後、後日別のタイミングで投資し直す
ライフイベントへの対応 結婚・教育費・介護などでまとまった資金が必要なタイミングで利確
新制度への最適化 旧NISAや課税口座の資産を売却して、新NISA口座で非課税運用をスタート

利確と買い直しをセットで考えることで、資産運用の自由度は格段に広がります。

新NISAで再投資するメリットとデメリット

新NISAで投資信託や株式を買い直すことで得られる最大のメリットは、「非課税での運用」です。

従来のNISAでは非課税期間が設定されていましたが、2024年から始まった新NISAでは非課税期間が無期限となり、長期的な資産形成に大きな追い風となっています。

加えて、年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯で最大1,800万円までの非課税枠が設けられており、その枠内で運用益や分配金にかかる20.315%の税金を完全に回避できるのは、他に類を見ない強力な制度です。

一方で、デメリットも存在します。

一度非課税枠を使って購入した金融商品を売却しても、その年の非課税枠は復活しないというルールがあるため、枠の使い方には慎重さが必要です。

また、利確時に課税口座で売却を行えば、当然ながら売却益には税金が発生します。

これが「買い直し時のコスト」となり、想定よりも非課税メリットが薄まる可能性もあるのです。

投資信託を買い直す前に、現在の含み益・含み損の状況と新NISAの年間投資枠を冷静に見極めたうえで判断することが大切です。

NISAで買い直すと税金はかかる?仕組みを解説

NISA口座での投資は非課税ですが、勘違いされやすいのが「NISA口座に移す=税金がかからない」という考え方です。

実際には、既に特定口座などで保有している投資信託をNISA口座に移すことはできません。

そのため、一度売却してから、あらためてNISA口座で新規に購入し直すという手順が必要になります。

この売却時点で利益が出ていれば、通常通り20.315%の税金がかかります。

たとえば10万円で購入した投資信託が15万円に値上がりしていた場合、5万円の利益に対して約1万157円の税金が発生します。

この税額は再投資の軍資金から差し引かれることになるため、「NISA口座に入れれば非課税で得」という短絡的な考えは危険です。

一方で、再投資した商品がさらに値上がりした場合、その分の利益については完全に非課税で運用できるため、中長期的には税金を先払いするイメージで捉えると理解しやすくなります。

利確して再投資するベストなタイミングとは?

利確から買い直しまでを行う際、最も難しいのが「いつ利確するか」というタイミングの問題です。

市場の変動を予測することはプロでも難しいため、完璧なタイミングを狙うよりは「合理的な判断基準」をもとに行動することが大切です。

まず意識したいのは、「投資信託や株式の価格が一時的に大きく上昇したタイミング」です。

このような時に一部を利確し、上がった分だけを新NISA枠で買い直すことで、税引き後の効率的な再投資が可能になります。

また、「ライフイベントが近づいている時期」も利確を検討する目安です。

結婚・住宅購入・教育資金などが数年以内に必要になるなら、値上がりしている今のうちに一部を現金化しておくのは賢明な戦略です。

さらに、「非課税枠を使い切っていない年末近く」も重要なタイミングの一つです。

その年の投資枠を活かすために、年内に利確して新NISA枠で買い直すという方法も有効とされています。

利確後に買い直す場合の注意点と対策

一度利確してから新NISA口座で再び投資信託を買い直す場合、事前に押さえておくべき注意点がいくつかあります。

とくに重要なのが「購入資金の確保」と「タイムラグによる価格変動リスク」です。

まず、売却した資金がすぐに手元に戻るわけではない点に注意が必要です。

投資信託の場合、売却から口座に資金が入金されるまでに数営業日(通常は3~5営業日)かかります。

その間に価格が変動する可能性があるため、思い通りの価格で買い直せないケースもあります。

これを避けるためには、事前に別の資金を用意しておき、買い付けと売却をほぼ同時に行う方法も一つの対策です。

また、NISA枠の使用にも注意が必要です。

一度非課税枠で購入した商品の売却後、その年の枠は復活しないため、安易に売買を繰り返すとあっという間に年間上限額に達してしまいます。

利確のたびに枠が消費されるという仕組みを正しく理解していないと、結果的に資産形成の妨げになってしまう可能性があります。

買い直す際には、あくまで新NISAの非課税枠内での運用を最大化するという視点で、売却のタイミングや方法を慎重に検討することが大切です。

利確した後に損をしない再投資の考え方

利確をした後、再投資によってその資金を有効に活かすには、「再投資の目的と期間の明確化」が欠かせません。

ここを曖昧にしたまま投資を再開してしまうと、想定していた成果が得られず、最悪の場合は損失に転じるリスクもあります。

まず再投資の前に、自分がその資金を「何年後に使う予定なのか」「どの程度のリスクを取れるのか」を明確にすることが必要です。

たとえば5年以内に使う予定がある資金であれば、価格変動が大きい株式投資信託ではなく、債券比率の高い商品やインデックスファンドを選ぶなど、資産配分を調整するのが現実的です。

また、利確後の再投資は分散投資の機会でもあります。

元の銘柄に再度集中して投資するよりも、リスクを分散するために複数の地域・業種・資産クラスに分けて投資する方が、中長期的に安定した成果を見込めます。

特に新NISAでは、投資可能な商品の中に「長期・積立・分散」に適したものが多く含まれているため、これを活かさない手はありません。

損を避けるためには、「慌てず」「焦らず」「しっかりと設計したポートフォリオ」で再スタートを切ることが最良の方法といえるでしょう。

新NISAで損しないための投資商品の選び方

新NISAでは投資できる商品が制度によってあらかじめ制限されていますが、それでも数百種類におよぶ投資信託やETFがラインナップされています。

その中から自分に合った商品を選ぶためには、まず「制度の目的に沿った選び方」を意識することが大切です。

新NISAの本質は、「長期的な資産形成を非課税で後押しすること」です。

そのため、短期的な値動きを狙う商品ではなく、時間をかけて安定成長が見込める商品を選ぶ必要があります。

具体的には、全世界株式型インデックスファンド(例:eMAXIS Slim全世界株式など)や先進国株式型ファンドなどが代表例です。

加えて、手数料の安さも重要です。運用コストが高い商品は、長期で見れば見過ごせない負担になります。

信託報酬が0.2%未満の低コストファンドを選ぶことが、新NISAで得られる非課税メリットを最大限に活かす鍵です。

もうひとつ見落としがちなのが「分配金の有無」です。

特に新NISAでは分配金を出さず再投資されるタイプのファンド(=複利運用型)を選ぶことで、資産がより効率的に増えていく構造になります。

毎月分配型などは、新NISAとの相性が良いとはいえません。

このように、投資商品の選定には制度との相性やコスト、将来設計に応じた投資期間の見極めが求められます。

利確後の資金を効率よく活かすには?

利確によって得た資金をどう活用するかは、その後の資産形成において非常に重要なポイントです。

ただ単に銀行口座に置いておくだけでは、インフレや物価上昇によって実質的な資産価値が目減りするリスクがあります。

そこで、再投資や資産の再配分を検討することが有効な選択肢となります。

まず検討したいのが「すぐに必要な資金と長期運用できる資金を分けること」です。

利確後の資金をすべて再投資に回すのではなく、生活防衛資金や1〜2年以内に使う予定があるお金は現金や定期預金に分けておき、残りの資金を長期投資に充てることでリスクを分散できます。

再投資先としては、新NISAの非課税枠を活用した投資信託が候補に挙がります。

とくに全世界株式や先進国株式など、世界経済の成長に連動するインデックスファンドは、時間を味方にできる資産運用として非常に優れています。

さらに、つみたて投資枠を活用して時間分散を図ることで、一括投資に比べて購入価格のリスクを平準化することができます。

また、もしすでにNISAの枠を使い切っている場合は、iDeCoや企業型DCといった他の非課税制度との併用も視野に入れて、全体としての最適な資産配置を考えていくとよいでしょう。

利益分だけを売却する戦略は有効か?

「利益分だけを売却する」という考え方は、一見すると合理的に見えるかもしれません。

元本はそのまま運用に残しつつ、値上がり分だけを利確して再投資や生活費に充てるという方法です。

これは「元本温存型の利確戦略」と呼ばれ、リスクを抑えつつ一定の利益を確保する手法として注目されています。

この戦略のメリットは、マーケットに引き続き参加しながら、利益を部分的に現金化できる点にあります。

例えば、元本100万円で購入したファンドが120万円まで成長していれば、20万円だけを売却して利益を確保し、残りの100万円はそのまま投資に残すことができます。

ただし、注意点もあります。

特定口座での売却であれば、この20万円の利益に対して約20.315%の課税が発生します。

また、売却後のポートフォリオが想定外に偏ってしまう可能性もあり、バランスの見直しが必要です。

新NISAの活用においても、部分的な売却は投資枠の無駄遣いにならないように計画的に行う必要があります。

たとえば、成長投資枠で購入したファンドを一部売却して再度購入しても、その年の枠は復活しないため、非課税メリットを最大化したい場合は利確・再投資の頻度に注意が必要です。

利確をこまめに行うメリットとリスク

相場の上昇局面では、「こまめに利確して利益を積み上げる」ことに魅力を感じる投資家も多いでしょう。

確かに一定の価格上昇が見られた時点で利益を確定しておけば、市場が反転しても損失を避けることができます。

心理的にも「利益を手元に残せた」という安心感が得られるのは大きなメリットです。

また、小刻みに利確することで、リターンのブレ幅を抑えることができ、特にリタイア世代や資産保全重視の投資家には向いている戦略ともいえます。

短期的な値動きに対応しやすいため、「一定の上昇率を超えたら利確」というルールを自分で設定しておくと、判断基準が明確になり、感情的な投資判断を避けることができます。

一方で、この戦略には見過ごせないリスクもあります。

最大のデメリットは、「非課税枠を早く消費してしまう可能性」です。

前述の通り、新NISAでは売却してもその年の投資枠は復活しません。

こまめな利確で非課税枠を細かく使ってしまうと、後にもっと良い投資機会が来た時に枠が残っていない、ということになりかねません。

さらに、利確のたびに税金が発生する課税口座では、税負担が積み重なり、最終的な利益が目減りしてしまう点にも注意が必要です。

新NISA内でのこまめな利確は一時的な売却なら問題ありませんが、枠の無駄遣いにならないよう、戦略的な判断が求められます。

新NISAでの積立投資と利確の関係性

新NISA制度の特徴として「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つが存在しますが、このうち「つみたて投資枠」は、年間120万円まで、長期・積立・分散投資に適した商品に限定されており、原則として毎月積立による投資を行うことが前提とされています。

積立投資は、時間を分散することで価格変動のリスクを平準化し、長期的な平均取得価格を抑えることができる「ドル・コスト平均法」の考え方に基づいています。

これにより、一括投資に比べて相場のタイミングを読む必要が少なく、初心者でも始めやすい運用手法となっています。

ただし、新NISAで積み立てた投資信託を途中で利確することも可能です。

とはいえ、利確後にすぐ買い直すとその年の非課税枠は復活しないため、慎重に判断する必要があります。

積立投資の最大のメリットは「時間を味方につけること」です。

過度な利確を繰り返すとこのメリットが損なわれてしまい、想定していた複利効果を得られなくなるリスクもあるのです。

そのため、新NISAにおける積立投資は「長期で保有し続けること」を基本にしつつ、必要に応じてライフイベントの資金化などを目的とした利確を検討するという、柔軟なスタンスが求められます。

株式投資の利確と買い直しの成功事例

投資信託だけでなく、個別株においても「利確して買い直す」という戦略は有効に活用されています。

特に近年の新NISA導入によって、課税口座から非課税口座への資産移動を目的とした利確→再投資が注目を集めています。

たとえばある個人投資家は、10年前に購入した某成長企業の株式を特定口座で保有していました。

株価は当時の約5倍に成長し、数百万円の含み益が出ていましたが、今後の値動きに対するリスク管理と、相続税対策も兼ねて2024年の新NISA開始に合わせて一部利確

課税分を支払ったうえで、残った資金を新NISAの成長投資枠で同一銘柄に再投資しました。

この戦略のポイントは、今後の値上がり益や配当金を非課税で受け取れる仕組みへ移行できたことです。

特定口座で保有を続けていたら、将来どこかで20%以上の税金がかかることを考えると、一定の税負担を許容した上で非課税運用に切り替えたことは、トータルで見れば合理的な判断といえるでしょう。

このような成功事例に共通するのは、「目先の利益ではなく、長期的な税効率と制度の特徴を踏まえた戦略」が取られている点です。

個別株でも投資信託でも、単なる利確にとどまらず、その後の買い直し戦略まで含めて設計されていることが、成果につながる大きな要因です。

再投資前に確認したい課税口座の注意点

新NISAでの再投資を検討する際に、見落としがちな点が「課税口座で保有している資産の状態」です。

というのも、NISA口座では既存の特定口座や一般口座にある商品をそのまま移管することはできません。

そのため、必ず一度売却して現金化する必要があり、その時点で利益が出ていれば課税対象となるのです。

また、課税口座での利確は「損益通算」や「繰越控除」といった税制優遇措置の対象となります。

たとえば他に含み損や損失確定している銘柄があれば、それと通算することで税金を軽減できる可能性があります。

こうした税制上のテクニックを活用することで、利確時の税負担を最小限に抑えることも可能です。

さらに、売却するファンドが「高分配型」である場合には、すでに過去の分配金で元本が戻ってきており、平均取得価格が低下しているケースがあります。

その場合、思ったよりも多くの利益が出ていて、予想以上の税金が発生することがあります。

再投資資金が予定より少なくなるリスクがあるため、購入時の取得単価や過去の分配金の影響も含めて事前にチェックしておくべきです。

利確後の新NISA運用戦略と将来の資産設計

NISAの非課税枠を最大限活かすには?

新NISAの最大の魅力は、何と言っても運用益が非課税になる制度設計です。

年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯で最大1,800万円まで非課税で運用できるという制度は、個人投資家にとって非常に強力な武器となります。

非課税枠を最大限活かすための第一歩は、「早めに枠を活用し始めること」です。

投資は時間を味方につけることが最大の武器であり、非課税の恩恵を長期間受けるには、できるだけ早く積立や投資をスタートさせることが重要です。

また、つみたて投資枠と成長投資枠を目的に応じて使い分けることもカギとなります。

たとえば、日常的な積立投資はつみたて投資枠を利用し、値動きが大きい個別株やテーマ型ファンド、ETFなどは成長投資枠で管理することで、リスクとリターンのバランスを取りながら効率的な運用が可能になります。

非課税の「枠」はあくまで有限であり、年間の上限を超えた投資は通常の課税口座に振り分けられるため、あらかじめ資金計画を立てて、投資額とタイミングを分散していくと、枠の浪費を防ぎつつ長期的な利益を得やすくなります。

売却後に投資枠が復活するタイミングとは?

新NISAでは「売却したらその年の投資枠が復活するのか?」という疑問を持つ方も多いですが、結論から言えば復活しません。

一度非課税枠で購入した商品を売却しても、その年に使った投資枠は戻ってこないため、売買のタイミングには十分な注意が必要です。

たとえば、年間の成長投資枠240万円のうち、100万円分の商品を購入し、その後売却したとしても、使った分の100万円はその年の枠としてカウントされたままとなります。

そのため、年内に再度100万円分を購入しようとすると、合計で200万円を使ったことになり、残りは40万円までという計算になります。

この仕様により、無計画に売買を繰り返すと、枠を無駄に消費してしまう恐れがあります。

逆にいえば、非課税枠を有効に活用したいなら、売却を最小限に抑えることが望ましいということです。

非課税枠が翌年にはリセットされ、再度上限額が設定されるため、「長期で保有したい商品はそのまま保持し、年単位での資金計画を立てて再投資を検討する」という姿勢が、新NISAともっとも相性が良いといえるでしょう。

利確してNISAで買い直す場合のリスク管理

「利確→買い直し」という一連の動きは、非課税制度を活かす上で有効な戦略ですが、同時にいくつかのリスクも伴います。

主なリスクとしては「価格変動リスク」「税金コスト」「枠の消費リスク」の3点が挙げられます。

まず、利確と再投資のあいだに相場が急変する可能性がある点には注意が必要です。

特に投資信託は、売却代金の受け取りまでに数営業日を要するため、その間に再投資先の商品価格が大きく変動してしまうと、期待していたリターンが得られなくなるリスクがあります。

また、課税口座で利確した場合には、利益に対して約20.315%の税金が課されるため、再投資に回せる資金が想定よりも少なくなる場合があります。

これは、NISAに切り替える際の“入場料”のようなものですが、どのタイミングで支払うかによって、資産の成長スピードに差が出るのです。

さらに、NISA枠を使った再投資である以上、その年の投資枠が消費されることになります。

再投資だからといってリセットされるわけではないので、資金の計画性がないまま繰り返してしまうと、後々枠が足りなくなるケースも出てきます。

リスク管理のためには、投資商品のボラティリティ(値動きの幅)を理解し、分散投資を基本とすることが重要です。

また、必要であれば一度に再投資するのではなく、数回に分けて購入する「分割投資」も効果的なリスク低減策となります。

新NISAはやめた方がいいという意見の真相

新NISA制度が始まって以降、「やめたほうがいいのでは?」という声を見かけることがあります。このような意見にはどのような背景があるのでしょうか。

まず誤解してはいけないのは、制度自体に大きな欠陥があるわけではないという点です。

むしろ、新NISAは過去のNISA制度に比べて、非課税枠が拡大され、期間も無期限となるなど、個人投資家にとって非常に有利な仕組みになっています。

ではなぜ「やめたほうがいい」という意見があるのかというと、多くは「制度を正しく理解していないまま始めてしまうリスク」や、「短期売買に向かない点」を指摘した内容が中心です。新NISAは、短期の売買や投機的な取引を目的とした制度ではなく、「長期・積立・分散」に基づいた資産形成を支援する制度です。

そのため、値上がり益をすぐに狙いたい、あるいは数ヶ月〜1年以内で成果を得たいという目的で投資を行う人にとっては、「思っていたのと違う」と感じてしまうこともあるのです。

また、NISA口座での損失は、特定口座での利益と損益通算ができないという点も見落とされがちです。

この点だけを見ると「デメリットが大きい」と捉えられることがありますが、これは制度の「非課税」という強力なメリットとのトレードオフであり、必ずしも制度の欠点とは言い切れません。

新NISAは、しっかりと制度設計を理解し、「長期で資産を育てていく」という視点を持てる人にとっては、極めて優れた資産形成ツールです。

「やめたほうがいい」という意見の裏には、短期思考・誤解・準備不足といった課題が潜んでいるといえるでしょう。

成長投資枠とつみたて投資枠の使い分け方

新NISAでは、「つみたて投資枠(年間120万円)」と「成長投資枠(年間240万円)」の2つの投資枠が設けられており、それぞれに異なる性質と目的があります。

この2つの枠を理解し、戦略的に使い分けることが、非課税メリットを最大化するカギとなります。

まず、つみたて投資枠は金融庁が認可した、長期・積立・分散に適した投資信託に限定されています。

対象商品は比較的低リスクで、手数料が低く、長期保有を前提とした設計がなされています。

例としては「eMAXIS Slimシリーズ」や「楽天・全米株式インデックス・ファンド」などが挙げられます。

この枠は、毎月コツコツと積み立てながら、時間を味方につけて資産を育てたい人に向いています。

一方、成長投資枠はより幅広い商品が対象で、個別株式やETF、アクティブファンド、REITなども選択可能です。

つみたて投資枠に比べてリスクはやや高くなりますが、その分リターンも大きく狙える商品が多く、資産をより積極的に増やしていきたい場合に活用できます。

使い分けの基本は、「安定的な資産形成はつみたて投資枠で、成長性を求める部分は成長投資枠で」という考え方です。

たとえば家計の収支に余裕がある場合は、毎月の積立でつみたて投資枠を使いながら、賞与や臨時収入で成長投資枠を活用する、といった柔軟な設計が可能です。

新NISAでの再投資で手数料はどうなる?

新NISAで投資を行う際にも、通常の課税口座と同様に商品にかかるコスト(手数料)には十分な注意が必要です。

制度としての「非課税」はあくまで運用益や分配金に対する課税が免除されるというものであり、購入時手数料・信託報酬・売却時手数料などは別問題です。

たとえば、投資信託には主に以下のような手数料が存在します。

手数料の種類 内容
購入時手数料 購入時に発生。最近は無料(ノーロード型)が主流
信託報酬(運用管理費) 運用中に毎日かかる費用。年0.1〜1.5%程度。長期保有では大きな差に
信託財産留保額 売却時にファンドに支払う手数料(発生しない商品も多い)

とくに注目すべきは「信託報酬」です。

たとえば、年0.2%と年1.5%では、20年後のパフォーマンスに数十万円単位の違いが生まれます。

新NISAで非課税のメリットを受けつつも、手数料で利益が相殺されてしまっては本末転倒です。

再投資を検討する際には、ノーロード(購入時手数料ゼロ)かつ低コストのインデックスファンドを中心に選ぶことで、長期的にコストを抑えた運用が可能になります。

また、ETFの場合は購入にかかる売買手数料にも目を向けましょう。

ネット証券の多くはNISA口座でのETF売買手数料を無料としているため、活用価値は高いです。

ウェルスナビの「買い直し」機能は使える?

ロボアドバイザーの代表格である「WealthNavi(ウェルスナビ)」では、2024年の新NISA制度開始に伴い、「買い直し機能」という新たなサービスが導入されました。

この機能は、従来の課税口座で運用していたポートフォリオを一度利確し、新NISA口座で同様の内容に再投資することをサポートするものです。

ウェルスナビの買い直し機能は、特に初心者や自分で売却・再投資の手続きを行うのが不安な方にとって非常に便利です。

具体的には、以下のような流れになります。

  1. 課税口座で保有している資産を自動で利確
  2. 利確後にNISA口座で再構築されるポートフォリオを提案
  3. ワンクリックで再投資を実行可能

このプロセスでは、ポートフォリオの中身や買い直し後の構成バランスも自動で調整されるため、「何をどのタイミングで買い直せばよいかわからない」という不安が軽減されます。

一方で、留意点もあります。

課税口座での利確には当然税金が発生するため、その分再投資資金が減ってしまう可能性があります。

また、買い直し機能を使ったからといって非課税枠が復活するわけではない点も要注意です。

総合的に見て、ウェルスナビの買い直し機能は「手間をかけずにNISA制度を活用したい人」にとって非常に有効なサポートツールと言えるでしょう。

ただし、使う前には枠の状況や税コストをよく確認した上で活用するのが理想です。

よくある質問Q&A10選

Q1:投資信託をNISA口座にそのまま移すことはできますか?
A:いいえ。現在の制度上、特定口座や一般口座で保有している投資信託を、新NISA口座へ直接移管することはできません。一度売却してから新NISA口座で買い直す必要があります。この「利確→再投資」によって、非課税での運用をスタートさせることが可能になりますが、売却時に利益が出ていれば約20.315%の税金が発生する点に注意が必要です。

Q2:投資信託を利確して買い直す場合、税金はどのようにかかりますか?
A:課税口座(特定口座など)で利確した場合、売却益に対して所得税15.315%+住民税5%=**合計20.315%**の税率がかかります。たとえば50万円の売却益が出た場合、約10万1,575円が税金として差し引かれ、手元には約39万8,425円が残ります。この点を理解した上で、買い直しによる非課税メリットと比較することが重要です。

Q3:新NISAでは投資信託を何度でも売買できますか?
A:回数の制限はありません。ですが、一度使った非課税枠は売却しても復活しないため、短期間に頻繁な売買を繰り返すと、非課税枠を早期に使い切ってしまうリスクがあります。特に成長投資枠は年間240万円までなので、戦略的な資産運用が求められます。

Q4:積立NISAや旧NISAを新NISAに変更できますか?
A:2023年以前の積立NISA・一般NISAは、自動的に新NISAに切り替わるわけではありません。旧制度で積み立てた資産はそのまま非課税期間満了まで保有可能で、新たに新NISA口座を開設し、別枠で投資を始める必要があります。すでにある投資信託を移動するには売却→再購入という手順が必要です。

Q5:投資信託の利確はいつするのがベストタイミングですか?
A:利確のタイミングは「投資目的」によって変わります。将来の教育資金や住宅購入など、具体的な資金使途が数年以内にある場合は、価格が上昇して含み益が出たタイミングで一部を利確して現金化しておくのがリスク回避につながります。特に新NISAへの切り替えを意識するなら、年内に利確し翌年の投資枠を活用するのも一つの方法です。

Q6:NISAで利確した場合、損益通算はできますか?
A:できません。NISA口座内での売却益や損失は、他の課税口座での利益・損失と損益通算や繰越控除ができないのが制度の特徴です。これは非課税制度の恩恵を受ける代わりに、節税面での調整機能が制限されることを意味しています。損失リスクを考慮する場合は、特定口座との使い分けが重要です。

Q7:新NISAの1800万円の非課税枠は一括で使えますか?
A:一括投資自体は可能ですが、年間投資上限は360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)となっており、1,800万円の枠を一度に使い切ることはできません。複数年にわたって計画的に積み立てや投資を行うことで、非課税枠を最大限活かすことができます。

Q8:投資信託で得た分配金は再投資するべきですか?
A:資産形成を目的とする場合、分配金の再投資を強く推奨します。再投資型のファンドでは複利の効果を最大化でき、新NISAの非課税メリットとも相性が良いです。一方、毎月分配型などは税効率が悪く、資産の成長スピードを鈍化させる可能性があります。

Q9:株式投資と投資信託、NISAで向いているのはどちら?
A:それぞれに適した枠があります。個別株を活用した株式投資は成長投資枠、長期的な資産形成を目的とした投資信託はつみたて投資枠が向いています。安定性を重視するなら投資信託、より高いリターンを狙うなら株式投資という選び方が基本です。新NISAでは両方を組み合わせて使えるため、目的に応じたポートフォリオ設計が可能です。

Q10:投資信託を利確して新NISAで再投資するメリットは?
A:再投資によって将来の運用益や分配金を非課税で受け取れることが最大のメリットです。課税口座で運用していた場合、将来的に出る利益には約20%の課税がかかるため、非課税制度を活用することで手取りベースでの資産効率が大きく改善されます。特に長期で運用する場合、この差は累積的に非常に大きなものになります。

株式・投資信託を利確して買い直すなら?新NISAの賢い活用法と注意点のまとめ

最後にこの記事のポイントをまとめました。

  • 投資信託を利確して買い直す最大の目的は、新NISAの非課税制度を活かした資産運用の効率化である
  • 新NISAでは年間最大360万円、生涯で1,800万円まで非課税運用が可能であり、制度の活用が資産形成に直結する
  • 利確して新NISAで再投資する際は、課税口座での売却益に約20.315%の税金がかかる点を理解しておくべきである
  • 利確から買い直しまでのタイミングには数営業日のタイムラグがあり、価格変動リスクに備える必要がある
  • 投資信託を再投資する際は、信託報酬やノーロードなど低コストの商品を選ぶことが長期運用に有利である
  • 株式投資と比較しても、投資信託の積立投資はドルコスト平均法により安定した資産形成が可能である
  • 利益分だけを売却する戦略は、元本を維持しながら再投資を行う方法として有効だが、NISA枠消費には注意が必要である
  • 新NISAでは売却しても投資枠がその年は復活しないため、資金配分と枠の消費計画を立てて運用する必要がある
  • 再投資前に課税口座での損益通算や平均取得単価を確認し、税負担を最小限に抑えるのが得策である
  • 投資信託を利確して買い直す判断には、「長期の資産運用方針」と「短期のライフイベント資金計画」を両立させる視点が欠かせない

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