認知症の親が「お金がない」と執着したときの対策と管理方法は?

認知症の親が「お金がない」と執着したときの対策 老後・ライフプラン

「お金がない」「通帳がない」「誰かに盗られた」——認知症の親からこうした言葉を何度も聞くようになり、対応に悩んでいませんか?実際には生活資金に困っているわけではないのに、“お金に対する強い執着”が見られはじめ、家族との会話がすれ違ったり、トラブルに発展したりするケースは少なくありません。

しかも対応を誤ると、
✅ 「家族が盗った」と誤解される
✅ 現金を使いすぎて家計に影響が出る
✅ 管理の不備が将来の相続問題に波及する
といったリスクが現実に起こり得ます。

本記事では、FPの視点から「認知症の親が“お金がない”と執着する状況に、家族はどう対応すべきか?」「金銭トラブルを未然に防ぐには、どんな管理・仕組みが必要か?」制度に頼りすぎず、家庭内で今すぐ実践できる対応策をお伝えします。

この記事の4つのポイント
  • 📌認知症の親が「お金がない」と訴える場面での具体的な対応策を紹介
  • 📌家庭内でできる現金・通帳・会話の管理方法をケース別に解説
  • 📌「お金への執着」が強まる前に整えておきたい金銭管理の仕組みを提案
  • 📌成年後見制度を使うべきか迷ったときの判断基準もFP目線で説明

認知症の親が「お金がない」と言うときの対応策【家庭内でできる実践例】

「お金がない」と繰り返す親への声かけ・対応の基本

認知症が進行すると、実際にお金があるにもかかわらず、「お金がない」「誰かに取られた」と繰り返し訴えるケースが多く見られます。

これは金銭感覚の混乱や不安から来る言動であり、単なる記憶の問題では片付けられません。

このようなとき、「あるじゃない」「そんなこと言わないで」などの否定は逆効果になることが多く、本人の不安を強めてしまう原因にもなります。

そこでまず大切なのは、「○○円ちゃんとあるよ」「預けてあるから心配しないで」といった事実ベースの説明+安心させる言葉を組み合わせることです。

何度同じことを言われても、冷静に、同じように返答する対応力が求められます。

声かけ例(反応が安定しやすいパターン)

状況 適切な返答例
通帳がない/盗られた 「いつもの場所にあるよ。あとで一緒に見ようか」
お金がない/使われた 「今日も○○円ちゃんとあるよ。ちゃんと管理してるから安心してね」
ATMに行きたい 「必要なときに一緒に行こうね。今は大丈夫だよ」

その積み重ねによって、「言えば安心できる」と感じてもらうことが、金銭への執着を少しずつやわらげる第一歩になります。

通帳・現金を見せる?ケース別の対応判断とは?

「通帳を見せて」「財布はどこ?」「いくらあるの?」と繰り返し確認を求める認知症の親に、実際に通帳や現金を見せるべきかどうか——この判断は、状況によって大きく変わります。

認知症の親に通帳と現金を見せる娘

まず理解しておくべきは、「見せれば納得して落ち着くケース」と「見せたことで不安が増すケース」の2通りがあるということです。

ケース別|見せる/見せないの判断ポイント

状況 対応方針 理由・補足
一時的に不安を訴えている ✅ 見せて安心させる 現物やコピーを見せることで「ある」と納得しやすい
見せても何度も確認要求が続く ❌ 逆効果の場合も かえって不安が増幅され、執着が強まる恐れあり
家族への疑念を口にする ❌ 非公開が基本 「取られた」といった誤解が強化される可能性が高い
比較的冷静に確認を求めてくる ✅ 写真やコピーを見せる対応 原本を使わず不安を抑える“代替提示”が有効

本当に安心できる材料は“管理されているという実感”であり、場合によっては見せない方が混乱を防げることもあります。

そのため、見せるかどうかの判断は
→ 本人の状態 × 不安の頻度 × 家族への信頼度
を見極めながら、“原本を使わずコピーや帳簿などで対応する工夫”も併用していくのが現実的です。

財布や金庫はどこに置く?家庭内の現金管理法

認知症が進行すると、財布や金庫の場所を忘れたり、「お金がない」「誰かが隠した」と訴えたりすることが頻繁になります。

このような状況で重要になるのが、家庭内での現金の置き場所と管理ルールの明確化です。

管理スタイル別|財布・金庫の置き場所と対応方針

管理方法 推奨度 特徴・注意点
✅ 本人がわかる範囲に“あえて見えるよう”に置く 「自分で確認できる安心感」が得られるが、過剰な確認や使いすぎに注意
✅ 家族が保管し、本人には“見本用の財布”を持たせる 実際の資金管理は家族が行い、本人の不安を軽減するバランス型
❌ 完全に隠す/鍵付きで厳重管理する 一時的な混乱は防げるが、「盗られた」「信用できない」と言われやすくなる

そのため、理想は—

🔹 実物の現金・通帳は家族が管理
🔹 本人には“少額+ダミーの財布”を持たせて確認欲を満たす

という二重構造にすることです。これにより、本人の安心感を保ちつつ、家族としての金銭管理リスクも最小限に抑えることができます。

同じ会話が何度も続くときのストレス回避術

認知症の親が「お金がない」と繰り返し訴える場面では、何度も同じ会話が続くことに家族が疲弊するケースが少なくありません。

ですが、対応のたびに感情的になってしまうと、本人の不安をさらに強めたり、家庭内の関係がぎくしゃくする原因にもなります。

大切なのは、「同じやりとりになる前提」で準備しておくこと。

以下のような対応の型や環境整備を取り入れることで、精神的な疲弊を抑えながら日常を保つことが可能になります。

ストレスを減らす対応術チェックリスト

✔ 項目 内容
□ 答え方をあらかじめ1パターン決めておく 毎回考えずに返答できるようにし、感情の揺れを抑える
□ 会話を“記録ではなく感情のやりとり”と割り切る 正しさより「安心してもらう」が目的と捉える
□ 「またか…」と思ったら、一呼吸おくルールを持つ 怒りや苛立ちを相手にぶつけない習慣をつける
□ “一緒に見に行こうか”などの行動提案で気をそらす 返答を変えずに行動で不安を分散させる方法
□ 返事の文言をメモ帳に貼る・用意しておく 「同じ返しでもいい」と思える工夫で負担を軽減

「盗まれた」と言われた場合のNG対応と冷静な対処

認知症の進行に伴って、「誰かが通帳を盗んだ」「財布がなくなった」「あんたが使ったでしょ」といった被害妄想的な発言が出てくることは珍しくありません。

家族としてはショックを受けたり、腹を立てたりするのが当然ですが、感情的な反論や否定は、状況を悪化させるだけです。

❌ よくあるNG対応例

  • 「誰も盗んでないでしょ!」と否定で返す

  • 「そんなこと言わないで」と感情で押さえ込む

  • 「ちゃんとあるじゃない」と強引に現物を見せる

これらは一時的に収まっても、不安の根本には届かず、かえって執着を強めてしまうケースが多く見られます。

✅ 発言パターン別|冷静な対応早見表

よくある発言 避けたい対応 推奨される返答例
「通帳がない」 「あるよ!」と即否定 「一緒に見ようか?たしか○○にあったはずだよ」
「あんたが使ったんじゃないの?」 「なんでそんなこと言うの!」 「そう思ったんだね。でもちゃんと管理してあるよ」
「財布が盗まれた」 「盗まれてないよ」と強く言う 「気になるね。どこに置いたか、一緒に探そうか」

見える化ツール(家計簿・付箋)で安心感を作る方法

認知症の親が「お金がない」と繰り返す背景には、金銭状況が自分で把握できない不安が強く関係しています。

そのため、“口頭で説明する”よりも、目に見える形で安心材料を示す工夫=「見える化」が非常に有効です。

家庭で活用できる見える化ツール例

ツール 活用ポイント
家計簿(手書き式) 支出・残高を簡単に記録。「いくらあるか」を本人が確認できる
通帳コピー 実物ではなくコピーを渡して“見せる専用”にする(改ざん防止)
付箋メモ 「今日は3,000円あるよ」など事実を見える形で貼っておく
ミニ黒板/ホワイトボード 「次の年金日:○月○日」など情報共有の掲示に便利
┌────────────┐
|冷蔵庫の扉や玄関横の壁に… |
|               |
|・「残金:○○円あります」付箋 |
|・「通帳→寝室引き出し」メモ |
|・「次の生活費は○月○日渡します」|
└────────────┘
→ 毎日目にする場所に貼ることで“今どうなっているか”を自然に記憶

こうした視覚で安心できる材料があると、「お金がない」という訴えが徐々に減る例も多くあります。

特に短期記憶が不安定な方に対しては、「何度説明しても…」という状況の突破口にもなり得る方法です。

👉 「【2025年版】老後ライフプランの立て方と資産形成完全ガイド」では、家計の見通しや必要資金の考え方をステップ別に解説しています。

否定せず納得を|トラブルを避ける会話テクニック

「お金がない」「通帳がない」と繰り返す親に、家族としてつい「そんなわけないでしょ」「もう説明したでしょ」と否定してしまいがちです。

ですが、認知症の方にとっては“今その瞬間に感じている不安”こそが事実であり、否定されることで信頼や安心感が損なわれてしまいます。

対応の基本は、真実を押しつけるより、“納得”してもらえる言い方に切り替えること。

以下のような“共感+納得”を意識した言い回しが有効です。

トラブルを防ぐ会話テクニック集

NGワード 代わりに使いたい言葉
「そんなことない」 「そう思ったんだね。今、確認してみようか」
「またその話?」 「気になるよね。今も不安な気持ちになってる?」
「何回言えばわかるの?」 「今日も忘れちゃったかな?一緒にもう一度見てみようか」
「盗まれたはずがないでしょ」 「心配になっちゃうよね。ちゃんと預けてあるから大丈夫だよ」

ポイントは、相手の不安を一度“受け止めたうえで”行動を促すこと。

結果として、“お金の話”がこじれにくくなり、日常のコミュニケーションも穏やかに保ちやすくなります。

介護者・家族間での情報共有と役割分担の工夫

「お金がない」「誰かが使った」といった認知症特有の言動は、家庭内での情報共有と役割分担があいまいなほど、トラブルにつながりやすくなります。

たとえば、

  • 「誰が通帳を預かっているのか」

  • 「いくらまで自由に使わせてよいのか」

  • 「介護職員にも伝えていい情報はどこまでか」
    といった点が曖昧なままでは、本人の不安だけでなく、家族間の誤解や衝突も生まれやすくなります。

父親の介護

家庭内で取り入れたい情報共有・役割分担の工夫

  • 通帳・キャッシュカードの保管者を決めて明示する(例:長男が保管、妹に毎月報告)

  • お金の使い道や残高は、LINEグループや共有ノートで定期報告

  • 認知症の親が話した内容も、誰かが聞いたらすぐ記録・共有(被害妄想対策)

  • 「本人にいくら持たせるか」など判断が分かれそうなことは、事前に合意ルールを作成

🖼️ 家庭内連携体制イメージ

【金銭管理の家庭内分担例】

     ┌─────────────┐
│ 通帳・印鑑の保管担当(長男)│
└────┬────────┘

┌────────────┐     ┌────────────┐
│ 現金の受け渡し・日用品購入(次女)│←情報共有→│ 生活記録・会話メモ(妻)│
└────────────┘     └────────────┘

すべての内容を週1でLINEやノートに記録し、全員が見られる状態にしておく

1人で抱え込まず、チームで管理する体制を整えることが、金銭トラブルの未然防止につながります。

また、責任の所在が明確になることで、家族間の摩擦や不信感の予防にもつながります。

知恵袋に学ぶ“やってはいけない対応”とは?

Yahoo!知恵袋や介護系Q&Aサイトには、「認知症の親が“お金がない”と怒鳴る」「通帳を隠して家中を探し回る」「何度説明しても納得してくれない」といった悩みが多数投稿されています。

これらの投稿を見ると、実際の家庭でも“対応を間違えたことでトラブルが悪化した”という例が非常に多いことがわかります。

❌ よくある“やってはいけない対応”例と代替策

失敗例 問題点 FP視点の代替対応
「もう何度も言ってるでしょ!」と怒ってしまう 不安を否定され、信頼関係が崩れる 何度でも「大丈夫、ちゃんとあるよ」と繰り返す覚悟をもつ
通帳・印鑑・財布を完全に隠す かえって妄想や疑念が強くなる コピーや“見せる専用”ツールを用意して対応
家族の誰か一人だけが全て対応している 対応が属人化し、精神的負担が集中 家族で役割分担し、LINEなどで情報共有
成年後見制度を「仕方なく」申し立てる 本人の信頼をさらに損なう可能性も 可能な限り事前に話し合い、同意を得てから進める

だからこそ、事前に「やってはいけない対応」とその代替策を知っておくことが、家族と資産を守る第一歩になります。

認知症による「お金への執着」を防ぐための管理術【FPが考える備えと制度活用】

家族内でお金の管理ルールを明確にしておく方法

認知症の親のお金を管理するうえで、家族間で“誰が何をどこまでやるか”を明確に決めておくことは非常に重要です。

ルールが曖昧なままだと、本人の不安だけでなく、家族間の摩擦・疑念・責任の押しつけ合いにもつながります。

管理ルールの基本設計3ステップ

  1. 保管・管理する人を決める
    → 通帳、キャッシュカード、印鑑を誰が預かるかを明確にし、他の家族にも通知する
  2. 本人への現金の渡し方・上限を決める
    → 例:「1日1,000円まで」「週1で家計簿と一緒に手渡し」
  3. 定期的に家族で“お金の使われ方”を共有する
    → 使途・残高・トラブルの記録を、LINEやノートで共有する習慣を持つ

📌ルール化による主なメリット

  • 金銭トラブルの責任所在が明確になる
  • 管理者の心理的負担が軽くなる
  • 家族間の不信感・誤解を未然に防げる
  • いざというときに第三者(ケアマネ・医師)にも説明しやすい

家族が“あうんの呼吸”で乗り切ろうとするのは限界があります。

FPとしても、お金のトラブルこそ仕組みで防ぐことが何より有効だと強く感じています。

高額引き出しを防ぐ|口座・キャッシュカードの管理法

認知症の進行により、「気づいたら高額を引き出していた」「通帳を持って一人で銀行に行こうとした」といった事例は後を絶ちません。

このようなトラブルを未然に防ぐには、口座とキャッシュカードの“運用ルール”を整えることが不可欠です。

高額引き出しを防ぐための管理テクニック

管理項目 対応方法 補足ポイント
キャッシュカード 一時的に家族が預かる/磁気停止する 「家族が管理してるから大丈夫」と説明して納得を得る
銀行口座 “日常用”と“貯蓄用”に分ける よく使う口座は少額に、貯蓄はアクセス制限をかける
ATMの利用限度額 最低限まで引き下げる(例:1日1万円) 銀行窓口またはインターネットバンキングで設定可能
ネットバンキング ログイン情報を共有せず封印 突然の送金や口座間移動を防止できる

📝補足アドバイス

  • 銀行によっては「認知症対応の相談窓口」を設けている場合もあります。
    → 事前に家族で相談しておくと、対応がスムーズになります。
  • また「本人の意向を完全に無視しない」ことも重要です。
    → いきなり全てを取り上げるのではなく、“使わせる枠”と“守る枠”のバランスを設計することが、トラブルを最小化するポイントです。

“現金を持たせるかどうか”の判断と運用の実例

認知症の親に「現金を持たせておくべきか、それとも預からせるべきか」は、多くの家庭で悩まれるポイントです。

お金が手元にないと本人が不安を感じやすくなり、一方で自由に使える現金があると使いすぎや紛失のリスクも増えるというジレンマがあります。

そこで重要になるのが、本人の状態や行動パターンに応じた「持たせ方の調整」です。

現金の持たせ方|判断と実践のフローチャート

本人の状態 推奨する対応 補足
冷静に必要額だけ使える段階 少額(例:1,000円前後)を財布に常備 安心感を保ちながら実質的な管理は家族側に置く
不安が強く何度も確認する ダミー財布+コピー通帳で安心材料を補う 実際の管理は家族、本人には“見せるだけ用”を用意
同じ用途で繰り返し出費がある その項目だけ事前に支払っておく 例:お菓子・雑誌などの定期購入を家族が代行する
誤って高額を支出する・紛失歴がある 原則現金は持たせない+記録用メモを設置 例:「現金は家族が預かっています」と貼っておく

📌 運用時の注意点

  • 「持たせない」と決めた場合でも、説明なく取り上げると不信感や執着を強める可能性があります。
  • そのため、「安心していいよ、ちゃんと預かってあるからね」と言葉と見える形(メモ・コピー)で補完することが非常に効果的です。

*現金を持たせるかどうかは、親の理解度や金銭感覚だけでなく、家庭の経済状況にも左右されます。特に、年金未受給でほぼ収入がない状態であれば、本人に現金を持たせるリスクと生活全体の負担はより深刻になります。

同居家族が全額を補うような状況では、生活保護制度の適用可能性も含めて制度的な視点での検討が必要です。→ 「無年金の親と同居していると生活保護は受けられない?扶養義務と申請の壁

成年後見制度を使うべきかどうかの検討ポイント

認知症の親が金銭的な判断を自分でできなくなってきたとき、候補に挙がるのが「成年後見制度」です。

ですが現場では、「使った方がいいのか迷っている」「申し立てが面倒そう」「逆に家族の自由がきかなくなるのでは?」といった不安も多く聞かれます。

制度を導入する前に大切なのは、「この家庭にとって必要かどうか」を冷静に見極めることです。

制度を検討すべき3つのケース

検討すべき状況 背景
高額な契約や資産の処分(不動産・保険など)を伴う 家族だけでは法的な代理行為ができないため
親が金融機関・行政での手続きを一切できなくなっている 財産保全の観点から申立が必要となるケース
家族内でお金の使い方や管理を巡ってトラブルの火種がある 公的な管理者を介在させることで予防できる

⚠️ 制度利用時に知っておきたい注意点

  • いったん後見人が選任されると、お金の使い方に“家族でも制限がかかる”ようになる
    → 例えば、定期預金の解約や資産移動には家庭裁判所の許可が必要になる場合も
  • 毎年の報告義務・費用(数万円程度)が継続して発生する
  • 家族が後見人になれない場合、弁護士や司法書士が選任されることもある

残高チェックの頻度と注意点|異変に早く気づくには?

認知症の親が日々「お金がない」と訴える背景には、実際の残高やお金の動きを把握できていないことへの不安があります。

それに加えて、家族側が気づかないうちに高額な引き出しや不審な支払いが行われていたというケースも決して少なくありません。

そのため、日常的な残高確認の習慣化は、“安心材料の提供”と“トラブルの早期発見”という両面で非常に重要です。

残高チェックのおすすめ頻度と方法

頻度 方法 補足
週1回 通帳記帳・ネットバンキングの残高確認 定型化することで漏れを防止。家族間の共有も必須
月1回 支出記録・引き落とし内容を見直す 特に不要なサービスや誤引き落としがないかを確認
イレギュラー時 本人の行動に異変があったとき ATMの利用履歴・レシートの確認を含め柔軟に対応

⚠️ 注意したい3つのチェックポイント

  1. 不自然に現金引き出し額が大きくなっていないか?

  2. 家族が知らない新しい振込先・支払い先が出ていないか?

  3. ATMの利用頻度が急増していないか?

確認のたびに本人へ細かく説明する必要はありませんが、「○日に確認してるから大丈夫だよ」と伝えるだけでも、見えない不安を減らす効果があります。

定期チェックと家族内の共有体制が整っていれば、“取り返しのつかない支出”を防げる可能性が高くなります。

デジタル家計簿・見守りアプリの活用方法

「お金の管理が追いつかない」「本人の支出が不明なまま進んでしまう」といった悩みに対して、最近では家計簿アプリや見守り系ツールの活用が有効な手段となっています。

紙の家計簿では共有や履歴確認が難しい場面も、デジタルツールを使えば家族間での情報連携や異変の早期発見がしやすくなります。

家庭で使いやすいおすすめツール

ツール名 用途 特徴
Moneytree(マネーツリー) 口座残高・カード履歴の一元管理 一部共有機能あり。通帳の代わりとして使える
Zaim(ザイム) 家計簿記録 支出項目の可視化+メモ付き記録が可能
まもる~の(見守りアプリ) 高齢者見守り 行動記録やボタン通知、アラート機能が使える
Googleカレンダー+メモ連携 管理日程・支出記録 家族間でのシンプルな情報共有に最適

📌 活用ポイントと注意点

  • 本人に使わせるより、家族が情報を記録・管理する用途として活用する

  • 「見守ってる感」を出しすぎないよう、本人の尊厳に配慮する表現や運用を心がける

  • 毎月の支出記録を画面で見せながら、「今こうなってるから大丈夫だよ」と伝えるだけでも、不安軽減効果がある

手書きや口頭でのやりとりに限界を感じている場合、こうしたツールの導入によって家族の心理的負担が軽くなるだけでなく、親本人の安心感にもつながることが多くあります。

問題が深刻化する前に相談できる専門窓口とは?

認知症の親の金銭トラブルは、「まだ大丈夫」「そのうち落ち着くかも」と様子見をしているうちに、
✅ 高額な支出
✅ 家族間の疑心暗鬼
✅ 認知症の進行による判断力の喪失
といった取り返しのつかない事態に発展するリスクがあります。

こうした事態を防ぐには、「困ってから」ではなく、“違和感を覚えた時点で”外部に相談する体制を持っておくことが大切です。

相談できる代表的な窓口一覧

窓口名 対応内容 特徴
地域包括支援センター 認知症対応・介護全般・成年後見制度の初期相談 全国に設置。相談無料、訪問も可能な場合あり
地方銀行・信用金庫の窓口 通帳・口座の異常確認、後見制度の案内 銀行側から家庭裁判所につなげることも可能
市区町村の高齢者支援窓口 成年後見の申立支援、生活支援制度の紹介 制度的な観点での相談がしやすい
地元のファイナンシャルプランナー 財産管理・家族間トラブル・相続まで視野に 制度と感情のバランスを踏まえたアドバイスが可能

📌 こんな兆候があったら「相談タイミング」

  • お金の紛失や勘違いが月に複数回起きている

  • 家族内で“言った・言わない”の口論が増えてきた

  • 「盗られた」「騙された」といった言動が出始めた

  • そもそも管理方法に限界を感じ始めている

早い段階で外部とつながっておけば、制度活用だけでなく「家庭でどこまで対応できるか」も一緒に整理できます。

“判断力があるうちに準備できること”は意外と多いため、トラブルになる前の行動こそが家族全体の安心につながります。

高齢者110番 消費者トラブル全般を対象とした専用相談ダイヤル 📞 03-3235-3366(高齢者専用 消費者ホットライン)
※年末年始を除く毎日9時~17時対応

よくある質問Q&A10選

Q1:認知症の親が「お金がない」と何度も言ってきます。毎回対応すべきですか?
A. 本人にとっては毎回“初めての不安”です。繰り返しになりますが、「大丈夫」と根気よく安心を伝えることが大切です。

Q2:通帳や現金は完全に隠してもいいのでしょうか?
A. 完全に隠すとかえって妄想や不信感を強める可能性があります。コピー通帳やダミー財布を活用する方法が有効です。

Q3:認知症による「お金の執着」はどこまで続きますか?
A. 進行度や個人差によりますが、初期〜中期で特に強く見られます。徐々に認識機能が低下して収まるケースもあります。

Q4:自分が家族内で一人で管理を担っており、精神的に限界です。どうすれば?
A. 家族で役割分担を話し合うことが最優先です。LINEなどで共有体制をつくり、地域包括支援センターなど外部支援も検討しましょう。

Q5:現金を親に渡しても、すぐ「なくなった」と言います。記録すべきですか?
A. はい。簡単な支出メモや写真記録を残しておくと、説明・説得の材料になります。本人にも“記録がある”ことを示すと安心材料に。

Q6:銀行に相談することは可能ですか?
A. はい。多くの金融機関に「高齢者相談窓口」があり、ATM制限・口座分離・後見制度案内など柔軟に対応してくれます。

Q7:成年後見制度はすぐ使うべきですか?
A. 高額資産の処分や法的代理が必要な場合に検討します。「とりあえず不安だから」での利用は制限が多く逆に不便になることも。

Q8:高齢の親が他人にお金を渡してしまう危険はどう防ぐ?
A. 定期的な残高確認と、身近な人間関係の見直しが有効です。異常支出が見られたらすぐに銀行・警察・ケアマネに相談を。

Q9:スマホアプリなど本人が操作できない場合、家族が勝手に管理して問題ない?
A. 原則は本人の同意が必要です。認知症が進行して同意困難な場合は、書面による家族間合意や後見制度の利用も検討します。

Q10:親の「お金の不安」がきっかけで、家族関係がギクシャクしてきました。どうすれば?
A. 家計や資産管理の“見える化”と、第三者(FP・包括支援センター)の介入が有効です。誰か一人が抱え込まないことが前提です。

認知症の親が「お金がない」と執着したときの対策と管理方法のまとめ

  • 認知症の親が「お金がない」と訴える背景には、記憶障害・不安・執着心の影響がある
  • 毎回否定するより、「大丈夫」「ちゃんとあるよ」と繰り返し安心させる対応が重要
  • 通帳や現金は完全に隠すのではなく、コピー通帳やダミー財布の活用が効果的
  • 「盗られた」と言い出す前に、家庭内の役割分担と情報共有体制を構築しておく
  • 財産管理は、見せ方・説明の工夫で“本人の安心”と“家族の管理しやすさ”を両立できる
  • 成年後見制度は、資産規模や判断能力の低下に応じて慎重に検討すべき
  • 残高チェックは週1〜月1の頻度で、異変の早期発見とトラブル予防につながる
  • 家計簿アプリや見守りツールは、家族が主体で使うことで負担軽減に役立つ
  • 早期相談は「地域包括支援センター」や「法テラス」「FP相談窓口」などが頼れる
  • 問題を一人で抱え込まず、家族と支援機関を巻き込むことが解決の第一歩になる

【本記事の関連ハッシュタグ】

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