
2025年現在、メキシコペソは高金利通貨として注目される一方で、「危ない」「暴落しやすい」といった声も根強く存在します。過去には世界的なショックで急落を経験しており、外貨投資やFX取引を検討する上でリスクを正しく理解することが不可欠です。

この記事では、メキシコペソが危ないと言われる理由を最新データとともに紐解き、実際に大損を防ぐために押さえておきたいリスク管理のポイントを詳しく解説していきます。
- 📌メキシコペソが危ないと言われる背景と本質を読み解く
- 📌過去の暴落パターンから見えるリスクの特徴を知る
- 📌2025年最新情勢から読み取れる注意すべき動きを押さえる
- 📌大損を防ぐための実践的なリスク管理方法を紹介
メキシコペソは本当に危ないのか?リスク要因を徹底解説
メキシコペソが「危ない」と言われる背景
2025年4月時点、メキシコの政策金利は11.00%という高水準にあります。
この高金利は投資家にとって魅力的に映りますが、そもそも高金利通貨は「リスクプレミアム」として設定されるケースが多く、リスクの裏返しでもあります。
メキシコペソが「危ない」と言われる主な背景は次の3点です。
・国内の政治リスク(国営化推進・治安問題など)が潜在的に存在
・世界的なリスクオフ局面で真っ先に売られやすい通貨特性
特に、リスク回避ムードが高まった場合には、メキシコペソは「高金利通貨」として真っ先に売られる対象になりやすく、急激な下落を経験しやすい点が注意されています。
直近のメキシコペソ暴落歴とその原因
メキシコペソは、単体の経済悪化だけではなく、世界的なリスクイベントに巻き込まれる形で暴落することが多い通貨です。
近年でも、大きな下落局面は次の通り発生しています。
・1994年 テキーラショック
・2008年 リーマンショック
・2020年 コロナショック
これらの共通点は、すべて「世界的なリスクオフ局面」だったことです。
メキシコペソはリスク資産に分類されるため、以下のような局面で急落しやすくなります。
・米国を中心とした世界景気の悪化
・世界的な金融不安(例:リーマンショック)
・原油価格の急落(メキシコは産油国のため)
・新興国市場全体への信用不安
つまり、メキシコ独自の事情だけでなく、世界経済全体の動向によって大きく左右されるという点が、メキシコペソ運用の難しさでもあります。
【ケース1】1994年 テキーラショックとは?
1994年末、メキシコ政府は急激な資本流出を防ぐため、固定相場制(ドルペッグ制)から為替自由化へ移行しました。
ですが、この政策転換は市場に大きな不信感を与え、ペソは急落。外国資本が一斉に引き上げられる「テキーラショック」と呼ばれる通貨危機を引き起こしました。
・政治的不安定(大統領選後の暗殺事件など)が続く
・米国金利上昇により、メキシコからの資本流出が加速
・メキシコ政府がドルとの固定相場を断念し、ペソ下落
・短期間でペソの価値が約50%下落(対ドル)
・IMFと米国政府が総額520億ドル規模の緊急支援パッケージを実施
(出典:国際通貨基金 IMF 「The Mexican Peso Crisis: Origins and Consequences」)
この危機は、新興国通貨への不信感を世界中に広げた最初の大事件とも言われています。
メキシコペソの「危ない」というイメージは、ここで世界中に強く印象付けられました。
【ケース2】2008年 リーマンショックとペソ急落
2008年9月、米国の大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことにより、世界中が未曾有の金融危機に突入しました。
このリスクオフの流れのなかで、新興国通貨全体が売られ、メキシコペソも大きく下落しました。
・2008年9月〜2009年3月の約6か月間
・メキシコペソ円相場は約33%下落(対円)
加えて、メキシコ国内の株式市場(IPC指数)も大幅に下落し、投資資金の外資流出が加速しました。
この時期、ペソの下落だけでなく、外貨準備高も急減し、中央銀行による為替介入が必要となるほど、通貨防衛に追われた経緯があります。
このリーマンショックによって、メキシコペソは再び「リスク資産」として警戒される通貨として定着しました。
【ケース3】2020年 コロナショック時の影響
2020年、世界を襲った新型コロナウイルスのパンデミックは、リスク回避ムードを一気に高めました。
メキシコペソも例外ではなく、次の要因が複合的に重なって急落しました。
・世界的な経済活動停止によるリスク資産売り
・原油価格暴落(WTI原油価格が一時マイナス圏へ)
・観光業の停止(メキシコのGDPに大きく寄与する産業)
・米国経済の急減速(輸出減少)
・2020年2月中旬〜3月末のわずか約1か月半
・対円で約22%の急落を記録
特に、原油価格が2020年4月に史上初のマイナス価格(WTI原油先物)を付けたタイミングでは、メキシコペソも市場の不安心理に大きく影響されました。
この時期は、メキシコ政府も緊急利下げを連発し、通貨防衛に追われる展開となりました。
メキシコ経済の不安要素とは?
メキシコ経済は成長を続けているものの、根本的な不安要素を抱え続けています。
特に、ペソのリスク要因となる構造的な問題は次のとおりです。
・米国経済への極端な依存(輸出の約80%が米国向け)
・国内治安の悪化(麻薬カルテルの影響による治安不安)
・エネルギー政策リスク(国営石油会社ペメックスの財政悪化)
・構造的なインフラ不足(特に地方部の開発遅れ)
・政策の一貫性に対する懸念(政権交代による投資環境の不安定化)
2025年4月時点で、IMF(国際通貨基金)はメキシコの2025年経済成長率見通しを2.2%としています。
これは新興国平均よりも低めであり、成長力に不安を抱える材料となっています。
また、メキシコの治安問題については、米国国務省が発表する「海外渡航危険情報」において、いくつかの州で最も高い危険レベルに指定されています(2025年4月時点)。
これらの不安要素は、単なる短期的な問題ではなく、長期にわたってペソの信用リスクに影響し続ける可能性があります。
原油価格とメキシコペソの関係
メキシコは中規模の産油国であり、原油価格の変動が国家財政と為替に大きく影響する国のひとつです。
そのため、原油価格が急落すると、財政赤字拡大懸念からメキシコペソ売りが加速する傾向があります。
・原油価格上昇 → 国家収入増 → 通貨安定・ペソ高材料
・原油価格下落 → 財政赤字懸念 → 通貨不安・ペソ安材料
2025年4月時点では、WTI原油先物価格は1バレル=72〜75ドル台で推移しています。
(出典:米国エネルギー情報局(EIA)WTI Crude Oil Spot Price, April 2025)
直近では価格の安定が見られますが、世界的な需要減退懸念や地政学リスク次第では、再び原油価格が急落するリスクもあります。
特に、原油安が長期化すると、メキシコ政府の歳入構造(石油関連収入比率が依然高い)への悪影響は避けられず、ペソ売り圧力が増す可能性があります。
また、国営石油会社ペメックス(Pemex)の財務状況も依然として脆弱で、国の信用リスクを高める要因となっています。
ペメックスの債務残高はGDP比で約9%(2025年4月時点推計)に達しており、これが市場の不安要素として意識されています。
メキシコ国営石油会社ペメックスの債務残高はGDP比で約9%に達しており、信用リスクを高める要因となっています。
参考:Moody’s Investors Service, Pemex Credit Risk Analysis, 2025年4月時点。
類似参考情報:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-30/RTX72W0G01E001
金利低下リスクと通貨防衛政策
2025年4月時点で、メキシコ中銀(Banxico)は政策金利を11.00%に据え置いています。
高金利はペソの下支え要因になっていますが、今後の利下げ局面では通貨防衛力が弱まるリスクが高まります。
・海外投資資金の流入(キャリートレード需要)
・インフレ抑制効果(国内消費へのブレーキ)
・通貨価値の安定
ですが、2025年後半以降、インフレ鈍化に伴い「年内1回の利下げ」予想が市場では強まっています。
もし利下げが実施された場合、以下の連鎖が懸念されます。
・キャリートレード資金の流出加速
・ペソ売り圧力の上昇
・外貨準備減少リスク
・通貨防衛コストの増大(為替介入が必要に)
このように、金利低下局面ではペソへの信認が低下しやすく、短期間で急落するリスクも高まります。
過去にも、2019年〜2020年の利下げ局面では、メキシコペソ円は1年で約10%下落しました。
したがって、今後のBanxicoの政策変更には特に注意が必要です。
米国経済依存リスク(米景気後退時の影響)
メキシコ経済は、地理的・経済的に米国との結びつきが極めて強く、輸出の約80%以上が米国向けとなっています。
この構造により、米国景気に大きく左右される脆弱性を抱えています。
・米国向け:81.5%
・カナダ向け:2.5%
・中国向け:1.8%
つまり、米国経済が悪化すると、メキシコの輸出産業は直接的なダメージを受け、それがメキシコペソ売り圧力に直結します。
・自動車・部品輸出の減少
・メキシコ国内工業団地の稼働率低下
・観光客減少によるサービス収入悪化
・外国直接投資(FDI)の停滞
2025年4月時点で、米国経済はソフトランディング(穏やかな景気減速)を模索している段階にありますが、リセッション懸念は依然根強く、IMFも米国の2025年成長率を1.6%程度とやや低めに見積もっています。
万が一、米国経済がリセッションに突入すれば、メキシコペソは大きく売られるリスクを抱えることになります。
そのため、ペソを運用する上では米国経済指標(特に雇用統計、GDP速報値)を常にチェックしておくことが不可欠です。
世界の中でのメキシコペソの立ち位置(通貨強弱比較)
2025年現在、メキシコペソは新興国通貨の中でも比較的安定していると評価されています。
とはいえ、依然としてリスク資産としての側面を持つことは忘れてはいけません。
・メキシコペソ(MXN):+2.3%
・ブラジルレアル(BRL):+0.8%
・南アフリカランド(ZAR):−3.5%
・トルコリラ(TRY):−25.4%
・アルゼンチンペソ(ARS):−43.7%
(出典:Bloomberg Currency Dashboard, April 25, 2025)
このデータを見ると、メキシコペソは他の新興国通貨に比べ、2025年も堅調な部類に位置していることがわかります。
・メキシコ中銀(Banxico)の政策運営の信頼性が比較的高い
・対外債務比率が新興国平均より低めである
・貿易黒字基調が継続している(2024年貿易黒字:約60億ドル)
一方で、やはり新興国通貨である以上、リスクオフ局面では「まとめて売られる」運命からは逃れられません。「相対的にマシ」であっても、ショック時には十分な注意が必要です。
メキシコペソ円の過去最大下落率データ
過去のメキシコペソ円相場を振り返ると、大きなリスクイベントのたびに深刻な下落を経験しています。
実際の下落幅を具体的にデータで見てみましょう。
【過去のメキシコペソ円急落データ】
このように、メキシコペソは大規模なリスクオフ局面では非常に大きなボラティリティを示す傾向があります。
・一度暴落すると底打ち回復までに長期間を要する(半年〜1年以上)
・下落局面ではスワップ収益を上回る為替損失が発生する可能性がある
というリスクも常に考慮する必要があります。
・スワップポイント収益 < 為替損失
・含み損拡大により、精神的ストレスが大きい
・損切りを強いられる場合、損失が確定する
特に高金利通貨だから安心だという先入観は危険であり、メキシコペソを保有する場合は十分なリスク管理と長期耐性が必須です。
メキシコペソ運用で失敗しないための考え方とリスク管理
メキシコペソFX・債券投資の注意点
メキシコペソは高金利通貨であるため、スワップポイント狙いの投資先として人気ですが、リスクも忘れてはいけません。
特に注意すべき点は以下の通りです。
金利差だけを見て魅力を感じてしまうと、想定外の為替変動に耐えきれず大きな損失を抱えることにもなりかねません。
取引時に押さえておくべきリスク管理ポイント
メキシコペソ運用では、最初から明確なリスク管理ルールを設定しておくことが重要です。
・ロスカットラインを必ず事前設定する
・許容できる最大損失額を決めておく
・暴落時にも耐えられる資金余力を確保する
・感情的なナンピン買いを絶対に避ける
とくにスワップ狙いの場合は、長期保有を前提とするため、短期的な価格変動で慌てない資金設計が求められます。
低レバレッジ運用が基本(レバ2倍以内目安)
メキシコペソ運用では、低レバレッジ運用を強く推奨します。
目安としては、レバレッジ2倍以内が理想的です。
・レバ1倍(現物相当):暴落しても元本毀損リスク小
・レバ2倍:適度なスワップ収益を得つつ安全運用可能
・レバ5倍以上:暴落時に強制ロスカットリスク大
高金利通貨は魅力的な一方、相場急変時にはレバレッジが高いほど損失リスクが飛躍的に高まります。長期運用を目指すなら、低レバレッジこそ最大の防御策です。
ロスカット回避の資金設計(実例シミュレーション)
メキシコペソ円を運用する場合、具体的にどれくらいの資金を準備すれば、暴落局面でも耐えられるのでしょうか。
ここでは実例シミュレーションを紹介します。
・取引通貨:10万通貨(メキシコペソ円)
・現在レート:8.5円(2025年4月時点水準)
・レバレッジ:2倍以内を想定
・必要証拠金(レバ2倍想定)=約42万5,000円
(8.5円×10万通貨÷2)
ここに加え、急落時に耐えるための余剰資金も積み増しておく必要があります。
・仮に8.5円→6.5円まで下落(約−24%)
・必要な追加証拠金+耐えうる含み損対策資金=約20万〜25万円程度
・取引に必要な証拠金:約42.5万円
・耐えるための余剰資金:約25万円
→ 合計:約67.5万円以上推奨
このように、10万通貨運用する場合でも、最低でも65万円以上の資金余力を用意しておくことが、安全運用のための一つの目安になります。
「高金利通貨=安全」ではないと理解する
高金利通貨というと、安定してスワップポイントが得られるイメージから「安全そう」と誤解されがちですが、これは大きなリスクです。
特にメキシコペソの場合、金利水準は高いものの、
・原油価格依存
・国内政治リスク
といった構造的なリスクを抱えているため、単純な金利差だけで安全性を評価するのは非常に危険です。
スワップポイントの高さに目を奪われず、通貨価値自体の変動リスクを冷静に認識しておくことが、長期的な運用成功には不可欠です。
今後のリスクシナリオまとめ
2025年4月時点において、メキシコペソ運用で警戒すべき主なリスクシナリオは以下の通りです。
これらのリスクは単独で起こるだけでなく、複合的に絡み合って通貨下落圧力を強める可能性もあります。
特に米国景気と原油価格は、メキシコ経済にとって直接的なインパクトが大きいため、今後も注視が必要です。
📌 FPからのワンポイントアドバイス
よくある質問Q&A10選
Q1. メキシコペソは本当に危ない通貨ですか?
A. 高金利通貨であるためリスク資産として見られやすく、世界的なリスクオフ局面では売られやすい特徴があります。ただし、経済基盤は近年安定傾向にあり、過去よりはリスク耐性も向上しています。
Q2. 2025年現在、メキシコペソの金利はどれくらいですか?
A. メキシコ中銀(Banxico)の政策金利は11.00%付近で推移しています。(2025年4月時点)
Q3. メキシコペソはどのような局面で暴落しやすいですか?
A. 世界的な金融危機、原油価格急落、米国景気悪化、国内政治リスクなどの局面で急落しやすい傾向があります。
Q4. メキシコペソ円の過去最大の下落幅はどのくらいですか?
A. 例としてリーマンショック時には約1年で30%以上下落しました。コロナショック時にも一時20%を超える下落がありました。
Q5. 原油価格はメキシコペソにどの程度影響しますか?
A. メキシコは産油国であるため、原油価格の急落は経済悪化→ペソ安に直結しやすい傾向があります。
Q6. メキシコペソ建て債券は安全な投資先ですか?
A. 為替リスクを抱えているため、利回りの高さだけで判断するのは危険です。円建てに戻す際の為替変動リスクに注意が必要です。
Q7. これからメキシコペソFXを始めるなら、どれくらいのレバレッジが適切ですか?
A. 目安としてレバレッジ2倍以内に抑えることを推奨します。ロスカットを回避しながら長期保有できる水準が理想です。
Q8. メキシコ経済の今後の成長見通しはどうなっていますか?
A. 2025年時点では、緩やかな成長が予測されていますが、米国経済の影響を強く受けるため注意が必要です。
Q9. メキシコペソの運用で特に警戒すべきリスクは何ですか?
A. 金利低下リスク、米国リセッションリスク、原油価格急落リスク、政治リスクなどが複合的に影響します。
Q10. メキシコペソの暴落時に備えるにはどうすればいいですか?
A. 低レバレッジ運用、十分な資金余力の確保、リスク管理ルールの徹底が基本です。短期的な価格変動に慌てず対応する準備が必要です。
📌参考・出典元一覧
・Banco de México(メキシコ中銀公式政策金利)
・国際通貨基金(IMF)World Economic Outlook, April 2025
・Observatory of Economic Complexity(メキシコ輸出構造データ)
・Investing.com(メキシコペソ円為替データ、USD/MXNヒストリカルデータ)
・OANDA Historical Exchange Rates(過去為替レートデータ)
・Bloomberg Currency Dashboard(通貨強弱比較、2025年4月時点)
メキシコペソは危ない?リスク要因と大損を防ぐための徹底ガイド!のまとめ
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